連載 現場支援のe-HRM 第9 回(最終回) 三菱電機インフォメーションシステムズ PDCA サイクルによる運用で 社員の自律的なスキルアップ環境を支援

早い段階からHRM システムを自社開発し社内で運用してきた三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)が、その実績を基に製品化して提供しているのが「e-HRM(人材育成支援システム)」である。“Growing people grows business !”をコンセプトに、PDCA サイクルに基づく運用で、学習する組織づくりを支援する。
自律的な育成を支援するシステム
「企業の繁栄は社員の成長によってもたらされる」という考え方はいまや多くの企業にとって自明のこととなっているが、それを実現するためには、経営戦略の実現に必要な人材像を明確にし、社員に求められるスキルレベルを明らかにするとともに、現状と目標とのギャップを把握して育成計画を実行していくことが必要になる。MDISが提供するe-HRMは、こうした企業における人材育成を支援するシステムとして開発された。個々の社員が上司の支援を得ながらスキルアップを計画し、その目標に向けて取り組む仕組みを提供する。教育事業部HRM 推進部部長の伊藤雅寛氏は、e-HRMの開発経緯を次のように語る。
「我々の提供するe-HRMは、元々社内で5 年ほど前に開発し、運用してきたシステムをベースにしています。社員のスキル管理はそれまで紙ベースで行ってきましたが、異動があるたびに情報が散在するなど、管理上の問題がありました。そこで、全社共通のフレームで社員のスキルマネジメントができるシステムを開発したのです」
社員のスキルを管理するためには、能力を測る軸が必要となる。MDIS のe-HRMではコンピテンシー(顕在化した行動、業績につながるプロセス)、資格取得(潜在的な能力)、業務経験という三つの軸を採用している。この三つの軸を基に社員の育成を図るとともに、社員の総合的な能力を評価することで、その結果を報酬や昇進、配置などにリンクさせることも可能となる。
とはいえ、このシステムだけで人事考課を行うことは得策ではないと伊藤氏は考えている。
「e-HRMのデータだけで評価を導き出すことは危険です。フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションも交えながら、総合的に評価するべきであり、データは評価を行うための参考資料として考えた方がいいでしょう。むしろ、社員が自律的にスキルアップするための環境づくりを支援するツールとして捉えた方がいいと考えています」
PDCA によるe-HRM 運用モデル

MDISでは、e-HRMの活用法として、PDCAサイクルによる運用を提唱している(図表1)。
まず「Plan」では、コンピテンシーや社員のスキル情報(保有資格や業務経験)、事業計画などを基に現状のスキルの把握と目標設定を行い、システムに登録する。ここで大切になるのが現場の上長の関与だ。面談も交えながら、上長が部下の目標設定に必要な指導を行うことで、組織の実情に即した目標設定が可能になる。