連載 組織の壁を破る!CFT 活動のすすめ 第5 回 研修課題は「事業目標の達成」 実践を通じてリーダーを育成する オムロンヘルスケア
オムロン本体から分社独立したオムロンヘルスケアでは、自律した経営へと変容を求められるなかで、自律型リーダーの育成が急務となった。実践的なリーダーシップを習得させるために、同社は大胆な育成環境を用意する。それは、現実の経営計画で策定された具体的な事業目標の達成を研修課題に設定し、目標達成に向けた教育を行うというものである。リーダーと業務遂行をともにするプロジェクトメンバーも巻き込み、半期にわたる研修が展開された。
新会社の喫緊の課題は次世代リーダーの育成
京都市右京区に本社を置くオムロンヘルスケアは、オムロンのヘルスケアビジネスカンパニーと研究開発拠点であるオムロンライフサイエンス研究所を統合した戦略グループ企業である。経営統轄部人事総務部長の飯田政明氏が企業概要を説明する。
「現在社員数は約280 名で約230 名が一般職の社員、約50名が管理職ということになります。230 名のうち約40名はスタッフ職となり、約190 名を営業と開発が50%ずつ占める構成になります。生産機能に関しては関係会社のオムロン松阪という別会社が担っています」
オムロン本体から独立して分社化したのが2003年7月1日、自主経営を歩み出してからまだ2年にも満たないフレッシュな経営体である。
これから市場を貪欲に切り開いていこうとする新会社がチャレンジした人材開発マターは、何だったのか。
それは〈次世代リーダーを育成する自律型思考/行動プロセス教育〉だった。
なぜ、フレッシュな新会社に次世代リーダーの育成が求められたのか。
飯田氏が語る。
「いままで弊社はオムロン本体の組織として、強烈な組織力をバックボーンとするトップダウン型の事業推進が展開されてきました。しかし、独立事業体として新たな出発をすることで、常に自律した経営判断や事業判断が求められるようになり、各事業セクターをマネジメントするリーダーにも、自律的な思考や行動が要求されるようになったのです。組織や上司の指示待ちで行動を決めるのではなく、自分自身の決断と責任で柔軟に環境変化や競争に対応し、打ち勝つことができる自律型リーダーの育成が急務となりました」
新会社の経営ミッション遂行と自律型リーダーの育成は、どちらも不即不離の関係性を持っていた。
では、自律型リーダーはどのようにして育成すればよいのか。
キーワードは〈実践〉だった。
「リーダーが学んで身につけるべき自律型行動は、事業の最前線で実践されることで経営に貢献します。いくら座学でリーダー論を理解しても、仕事で使えないリーダーシップでは意味がない。学ぶべき自律型行動は、徹底的に実践を通じて身につけることがmustであると、考えたのです」
頭でっかちの理論派リーダーを育成しても、事業現場で実戦スキルを発揮できなければ経営貢献は果たせない。ゆえに自律型リーダーシップは、「徹底した実践体験をベースにして習得させる」といった育成基本方針が、トップと人事総務部門で形成されていった。
「部門長を始めとする社内ヒアリングでも、“リーダー研修はより実践的な内容であるべきだと思う”、“部門レベルに顕在化している具体的な事例を課題にしたらよい”といった意見が多数寄せられました。研修を実施する立場、研修を受講する立場の双方が“学びは実践的でありたい”と同じ認識を共有していったのです」
研修成果を事業目標の達成とリンク
仕事で使えるリーダーシップマネジメントを習得したい。
それが、トップと次世代リーダーが共有するオムロンヘルスケアの総意だった。
ならば、どうすれば実践的な人材育成が展開できるのか。
オムロンヘルスケアは、極めて大胆な育成環境を用意した。