営業は「知のコンダクター」
営業担当者を生かすも殺すも営業リーダーのマネジメント次第といえる。顧客ニーズが多様化し、営業担当者の意識も変化した現在に求められるのは、かつての「管理系」マネジメントではなく、「人間系」マネジメントである。営業リーダーは、意図的にナレッジマネジメントのプロセスを回しながら、部下の育成を図るべきである。
1. 業績格差は紛れもない人災である
最初に断言しておきたいことがある。本項の見出しにもしたが、「業績格差は紛れもない人災」である。特に営業の場合には、そのことが顕著に表れる。
自分の部下のことを、「あいつはダメだ」「アホだ」と言っている営業リーダーを見かける。それは自分自身のことを、「ダメなやつだ」「アホだ」といっているのと同じだ。厳密な入社試験を通った営業担当者に、ダメなやつは存在しない。
ダメにしたのは、上司である営業リーダーなのだ。優秀な営業リーダーは、ダメなやつを育てない。上司が替わった途端に、業績が向上したチームを何度も見ている。営業担当者のモチベーションが劇的に高まり、チームが一枚岩になっての結果である。
さまざまな企業から、営業リーダー研修を依頼される。しかし原則的に、全員一律の研修は受けないことにしている。意欲のある人だけを、選抜してもらっているのだ。筆者は、次のような信念を持っている。
成果=意欲×(知識+適性)
つまり意欲のない人には、成果が期待できないということである。企業の入社面談で、いちばん重要視されているのは「意欲」であろう。ここを見極めたうえで、採用された営業担当者である。それがいつの間にかゼロになっているのは、上司である営業リーダーの責任なのだ。
ちなみに「成果の公式」は、次のように部下指導に活用する。意欲があるのに「知識」がない営業担当者には、ロールプレイを徹底する。意欲があるのに「適性」がないケースは、同行指導を強化する。そうすると必然的に、成果は上がってくる。
2. ニつのマネジメントスタイル

営業リーダーのマネジメントスタイルは、2種類に大別できる。これまで多くの企業が求めていたのは、古いタイプの「管理系」マネジメントであった。顧客ニーズが多様化し、営業担当者の意識も変化した現在、もはや「管理系」では売れない。営業リーダーを、「人間系」マネジメントにシフトしなければならない(図表1)。すべての項目を、説明するスペースがない。比較してもらえば、一目瞭然のことだと思う。わかりにくいところだけ、補足させていただく。
◎部下同行の方法
営業リーダーの同行には、3種類のタイプがある。「戦略的同行」は、重点顧客へのごあいさつ。「営業的同行」は、名刺パワーによる商談の仕上げ。この二つは、営業担当者育成に直結しないものだ。大切なのは、「指導的同行」である。部下にふさわしい育成計画を作成し、それをベースとしての丸一日同行。営業担当者のレベルアップを考えるなら、この方法しか「同行指導」とは呼べない。
◎コンピタンシーモデル活用
企業に存在する「コンピタンシーモデル」は、あまり営業担当者に活用されていない。レベルが高過ぎて使えないのである。「身の丈コンピタンシー」は、営業リーダーと部下の会話から生まれる。
営業リーダー「君の顧客ニーズを探る活動って、5点満点で何点くらいだろうか?」
営業担当者(考え込み、やがて)「平均的なので、3点だと思います」
営業リーダー「では君が考える、もうワンランク上の顧客ニーズを探る活動ってどんなものだ?」

