連載 組織の壁を破る! CFT 活動のすすめ 第6 回(最終回) 読者座談会 組織変革、リーダー育成、現状の課題… さまざまな視点からCFT 活動を語る

企業事例を中心に、CFT 活動における考え方から実践例をお届けしてきた本連載も今回で最終回。そこで今回は、本連載をご愛読いただいた企業の人事・教育担当者3 名にご登場いただき、座談会形式で、それぞれの企業におけるCFT 活動の現状や、組織改革、リーダー育成などについてお話を伺った。企業にはそれぞれの企業風土、そして組織運営があり、CFT 活動も一律ではないが、これまでの連載や読者の皆さんと同じ立場にある座談会メンバーの声を通して、今後の活動の参考にしていただければ幸いである。
組織活動と組織の壁を破る挑戦の実態

太田
今回は皆さんの企業における組織横断的なCFT活動の現状やどのようにして組織の壁を破って経営の変革に挑戦されているのかを忌憚なく意見交換できればと思っています。それではお一人ずつ自社の現状について発言していただけますでしょうか。
菅谷
現在、株主総会後(6 月)の新社長の就任に向けて、クロスファンクショナルに編成した八つのWG(ワーキンググループ)を走らせています。八つのWGは、社長就任予定の稲員副社長と勝倉執行役総務本部長がチーム定義しました。基本的に執行役を取りまとめ役とし、チームメンバーが日夜部門を超えた活発な討議を展開しています。6月中旬を最終ゴールとし、計3回の報告会が行われ、現在2回目まで報告会が終了しています。
西村
私は昨年まで人材開発を担当していました。その時、CFT活動の導入を狙って各部門のマネジャーを対象にした教育プログラムを考えました。ちょうど事業体制としてサプライチェーン・マネジメントが変革される機会を捉えて、部門の壁を超えた取り組みをしようとしたのです。しかしタイミングが合わずに、結局、その取り組みは延期となりました。弊社は組織として3つの事業ラインで動いていますが、事業を展開させる必要性として、従来から組織の壁を超えた仕事は存在していました。したがって、人事・教育部門からの仕掛けとしてCFT活動を持ち込んでも、部門リーダーや社員がどこまで新たな活動の重要性を認識しているかどうかは判断が難しいところですね。人事がどう仕掛けられるかが、試されているのかもしれません。
齋藤

弊社は小型精密モーターの総合メーカーとして、比較的安定的な成長を遂げてきました。私自身は約20年間にわたって人事・教育を担当し、連綿と受け継がれてきた企業風土をいかに守り、育てるかに注力してきました。もともと組織の壁の低い会社であると自負してきましたので、正直CFT導入の重要性を実感できていないと言えるかもしれません。キャリア採用で入社した社員から「なぜ、この会社は社員各人の守備範囲がはっきりしないのですか?」と疑問を向けられるほど、組織の壁は低くなっています。弊社では25年前から“歩行ラリー”という教育ゲームを実践し、長年にわたって継続させてきました。このゲームはチームワークの重要性を習得させるもので、参加者一人ひとりにチームで活動する重要性を学んでもらうことができます。しかしながら社内の現状を客観的に見渡せば、部分最適志向が強くなり過ぎて全体最適志向が乏しくなってきた弊害や、リーダーに横並び意識が強くて危機意識が欠如しているといった問題が見受けられるのも事実です。
西村
組織や個人の守備範囲が広いというのは素晴らしいと思うのですが、組織的には特にどのようなオペレーションが実践されているのですか。
齋藤
そうですね、広い守備範囲の原点には「お客さまのために働くのであれば、だれがどうやってもいいじゃないか」という意識があるかと思います。社内全体には、セカンドを守っていてもショートの球も取れ!といった空気があります。そうした組織の壁を超えて実績を上げた人が、幹部として上がるようなメカニズムが働いています。
菅谷
でも、そうした守備範囲の広いマネジメントだと、責任と権限が不明確になり、仕事の仕上がりも中途半端になる恐れがあります。評価を行う際も、何でも積極的に取り組むという点は評価できても、一つひとつの仕事の精度(成果の評価)という観点では総合的に評価を行うのが難しくなるでしょう。
齋藤
そう思います。確かに評価は大変ですが、基本的には業績はもちろん、プロセスも重視した評価が行われてきたと思います。長期の視点で社員を育てていこうとしています。
太田
生産性と社員の満足度といった尺度で考えれば、課題があるかもしれませんね。菅谷さんの会社では、組織の壁の存在はどうですか。
菅谷
元々組織の壁は高い方だったと思いますが、複数のクロスファンクショナルなWGやプロジェクトを猪俣現社長のコミットメントの下で走らせているので、現在では部門を超えた議論が活発になされるようになってきました。普段から部門を超えた協働をしないと成果が出せないように、意識的にここ2 年くらいは組織を編成してきています。
太田
西村さんの会社はいかがですか。
西村
皆さんのお話を伺っていると、弊社は菅谷さんと齋藤さんの中間くらいの企業風土なのかと思います。取り立てて組織の壁が高いとも思いませんし、特に低いとも感じないといったところですか。
トップのオーナーシップやコミットメントはなぜ必要なのか
太田
では人事部門の取り組みとして考えた場合、組織の壁を突き破るCFT的な活動を活発化させる仕掛けは、どうしたらよいとお考えですか。