連載 Report from MPOD, Case Western Reserve University 「強み」に注目した、最先端の「組織開発」の現場より第4 回 AI(Appreciative Inquiry)と 創始者クーパーライダー氏の 人となりを探る(後篇)

2004年11月からケースウエスタンリザーブ大学・ウェザーヘッド経営大学院で「MS in Positive Organizational Development and Change(MPOD)」がスタートした。同学部の教授、クーパーライダー氏は、2004年のASTD(米国職業訓練協会)で特別賞を受賞して以来、「組織開発」の革命児として活躍の舞台を世界へ広げた。前月に続き、AIの体験学習が中心となったMPODクラスの風景、さらに、クーパーライダー氏を迎え、中国・北京で開催された「企業の社会貢献~Business as a Leader of Positive Change in Society」(2005年3月)をコラムで紹介する。
AI とは?
AI(Appreciative Inquiry)は、米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のデイビッド・クーパーライダー教授(David Cooperrider Ph.D.)が提唱し、NOKIA(ノキア)・英国航空・BP・NASAを始め、多くの組織で導入され、輝かしい成功実績を上げる「21世紀型の新しい組織開発」プログラムである。2004年5月のASTD(米国職業訓練協会)における、クーパーライダー教授の特別表彰を受け、注目度は高まっている。
欠点を探すこれまでの「問題解決型の組織変革手法」に対し、AI は個人や組織の「強み」に注目し、本来の可能性や活力を、ダイアローグで引き出すアプローチである。従来の問題解決型の組織変革とは、「欠陥」・「問題」に焦点を当ててきた。つまり、どこが悪いのか、不十分な点をリストアップして、その原因を詳細に分析し、解決策を外部から提案する方法である。
これに対して、AI は、組織やグループの潜在力・「強み」(★)を引き出すことにより、あたかも肉体を構成する細胞の一つひとつが活性化され、免疫力が高まり、全身が強靭なものへと変化する発想である。個人の発意と創造性を活かし、組織の体質改善を図り、チームの可能性を120 %へ、200%へ、500 %へと広げていくのが、AIのアプローチといえる。

インタビューが変革の鍵を握る

MPODコース、最初の滞在学習期間7日のうち、AI の体験学習が3日間、クーパーライダー教授によって展開された。既に前号でご紹介した通り、初日の午前中から早速、AI の4-Dモデルの最初にあるDiscovery(発掘)がスタートした。二人組のインタビュー(AI では「ハイポイント・インタビュー」という)により、お互いの成功体験、その当時の状況を発掘していくプロセスである。それによって「人」や「組織」の内側にある可能性・強み・価値を共有し、ポジティブな意識を磁力のごとく引き出し合う。
今回のテーマは「Extraordinary Learning Community」。つまり、このMPODというプログラムをどのように素晴らしい学習の場へと創造していくのかという、まさにリアルなものだ。ランダムに組んだ二人組で片道30分ずつ、「学び」をテーマに、過去のエネルギーが高い体験(ここでは学びを深めた体験)とその時に発揮した「強み」(self-best)に焦点を当てインタビューを行った。
人は、自分が体験したことに対して、自分なりの解釈をつけ、簡単な見出しをつけて、自分の内側の引き出しにしまい込む。頻繁に引き出しを開けることがなければ、記憶とともに、外気にさらされることがなく、徐々にセピア色に変わってしまう。