WAVE キヤノン グローバルに活躍できる人材を育成する CIL(Canon Innovative Leader)研修
「終身雇用」を日系企業の強みと言う一方で、「年功序列が組織を腐らせる」と明言するキヤノン社長・御手洗冨士夫氏。事業部単位の連結業績評価制度導入、「経営革新委員会」の設置など、大胆な改革を次々と実行し、同社の業績を大幅に改善させたことも有名だ。そんな御手洗社長の下、次世代リーダー育成に乗り出したキヤノンの人材開発の現在を紹介する。
リーダーは自然発生しないCIL 研修スタートの背景
国産カメラの開発から発した高い技術力を核として、1937年の創業以来キヤノンは多角化、グローバル化の道を歩んできた。80 年代から90 年代前半には、世界各地に研究開発拠点を設立、販売だけではなく、生産、研究開発も含めたダイナミックなグローバル経営を展開してきたといえる。その結果2004年末にはグループ企業217社、従業員数約10 万8,000 人の一大グループへと成長した。
世界各地の現地法人も歴史を重ね、10 年、20 年とキヤノンに勤続する現地採用スタッフも多くなった。既にヨーロッパ諸国の法人では8 割近くが現地人社長となっているという。
こうした背景のもと人材開発の課題として浮上してきたのが「グローバルに活躍できる次世代リーダー」の育成である。その最初の危機感は、数人の役員による委員会から持ち上がったそうだ。「どんどん業務が拡大し、海外へ事業を展開していった時代は、リーダーの育成についてそれほど意識しなくてもよかったのかもしれません。とにかくポストがあって、やるしかない。そうした修羅場に身を置くことで、自分で勉強もし、鍛えられもし、いつの間にか先頭を走るリーダーが生まれてきていました。ところが最近は組織が大きくなり、長年勤める社員も増えてくると、まずは修羅場を体験するポジションそのものが少なくなります」と、人事本部人材開発センター所長の荻原博氏は最近の状況について説明する。
「海外現地採用スタッフも増えました。また事業部制が進み、事業部のなかで優秀な人を囲い込むという現象も起きてきました。事業部長としては部門を担う中核社員を外に出したがらないのです。こういったさまざまな要因から人事の硬直化が進んできたのでしょう。昔のようにリーダーが自然に生まれるような、そんな時代ではなくなったといえます。意図的に人を動かし、育てていかなければ次代のリーダーが出てこない。そんな議論がその委員会で持ち上がりました」(荻原氏)
次世代リーダーに必要なものとは?
キヤノンが求める「リーダー像」
2003年9 月にCIL研修がスタートした背景は、以上のような「次世代リーダー育成」に対する経営からのニーズがあった。「CIL(Canon Innovative Leader)研修」という名前が示す通り、この研修の目的は革新を起こす次世代リーダーを育成し、またそういった資質を持った人材を発掘することにある。
キヤノンの人材育成を考える時、忘れてはならないのがキヤノン社員の「五つの行動指針」である。
【五つの行動指針】
①三自の精神