連載 人材教育最前線 第3 回 志を持って物事に挑戦する 個人の集まりが学習する組織をつくる
大学進学の際、自分が将来何を成し遂げたいか、明確な目的を持っている人はどれほどいるのだろうか。高校時代までの成績で進学先を選んでしまう人は決して少なくないはずだ。富士通経営研修所の福間宏之氏もその一人。大学院で工学を学んだ福間氏は、富士通に入社し半導体デバイスの開発・製造業務に従事する。そして16 年後、教育部門へ異動した。「志を持って物事に挑戦する個人を応援したい」という福間氏に、教育に対する情熱を伺った。
自信は自分だけでなく相手も満足した実感から生まれる
富士通グループの社員に各種の教育プログラムを提供している富士通経営研修所で、電子デバイスビジネスグループの社員に向けた研修の企画、コース開発、運営に加え、講師としても活躍している福間宏之氏。現在は数百名の聴衆を前にしても臆することなく話をすることができる福間氏だが、学生時代は人間不信で人と接するのが苦手だったと述懐する。
「理系科目の成績が優秀だったことが、大学進学の際に学部を選ぶ決定打でした。ところが、実際に大学で勉強を始めると自分は工学より、哲学や倫理といった分野に強い興味があることに気づいたのです」
大学時代の福間氏は、自分に自信が持てず、自分を好きになることができないでいた。友人もあまりいなかった。どうしてなのか。突き動かされるように福間氏は、哲学書を手に取った。哲学科の学生並みに心理学や倫理学の本を貪り読み勉強した。
「大学時代、私が自分に自信を持てなかった源は、小学生時代に運動が苦手だったからだと思います。それで劣等感を抱き、これが尾を引いてしまい、人間不信にまで陥ってしまった」
では、どうすればいいのか……。答えが見つからないまま、就職の時期を迎えた。
1982 年、大学院工学研究科の修士課程を修了した福間氏は富士通に入社。半導体デバイスの仕事に就いた。当時は、好景気もあり、月に100 時間程度の残業をこなしていたという。
「徹夜明けで日勤をこなした後に4時間の残業をする、といった働き方でした」
転機は3 年後に訪れた。独身寮を出ることになり生活が変わるなかで出会いがあり、それをきっかけに福間氏はクリスチャンになったのである。
「教会の教義は自分の存在そのものを問うことが主題にあります。クリスチャンになることは、まさに自律を目指す私のために与えられた機会のように思えました」