調査データファイル 第54 回 高齢者が活躍する職種
2005 年4 月から改正高年齢者雇用安定法が定めている65 歳雇用延長が段階的に実施されることになるが、最近の労働市場は、高齢者の雇用促進を実現できる状況にあるのだろうか。さらに、将来的に増加しそうな職種は、どのような分野なのか。また、そのときに求められるスキルはどんなものなのか。高齢者雇用をデータから予測してみたい。
1. 高齢者雇用の前提条件
改正高年齢者雇用安定法が定めている65歳雇用延長の段階的実施が、2005年4 月からいよいよ施行される。定年制の廃止、定年延長、継続雇用のいずれかによって、65歳までの雇用延長を実現しなければならない。
年功制が強固に定着した日本の企業社会においては、右肩上がりの賃金上昇をしてきた高齢者を雇用し続けるというのは、企業にとってかなり厄介な問題である。団塊世代の60歳定年到達をターゲットにした今回の法改正は、公的年金制度の改革と連動しており、高齢社会に突入する日本の社会にとっては、避けて通れない問題である。
バブル経済崩壊後の長期不況過程で、多くの企業は中高年社員をリストラしており、特に大企業は大幅な雇用調整をしている。リストラされた中高年社員の持っている経験や技術が、少なからず中国や韓国、台湾といった東アジア諸国の製造業の競争力を高めるのに貢献したことは確かである。リストラされた熟練工や技術者のかなりの人たちが、東アジア諸国の製造業に再就職したり、現地の日系企業でその国の若者を技術指導している。日系企業で技術を修得した若者たちは、スピンオフして新たな会社を設立し、強力な競争相手に育ってきている。
こうした中高年社員リストラによる副作用は、製造業の国内回帰といった傾向も手伝って、技術・技能伝承の問題を顕在化させ、団塊世代の一斉退職によって生じる技術・技能の空洞化が懸念されている。いわゆる「2007年問題」である。65歳雇用延長の段階的実施には、公的年金の改革に加えて、こうした技術・技能伝承の問題も絡んでいる。
ところで、過去の経験から言えることは、好況による人手不足が深刻化しない限り、高齢者雇用はなかなか促進されないということである。バブル経済末期には、例外的に高齢者雇用が促進されたが、これは極端な人手不足の進展によって、若・中堅層が採用できないため、その代替として高齢者が雇用されたのである。したがって、高齢者雇用の促進には、好況が不可欠である。