新連載 部下育成の新キーワード 関係性アプローチ 第1 回 関係性のなかから相互に学ぶ
部下育成がうまくできる上司を見極めたい。部下育成ができる上司を育てたい。こうしたHR担当者の声が最近増えている。部下を叱れない。子どもをしつけられない。子どもがいつキレるのかと不安で、遠くから眺めているだけ。部下に嫌われたくないがどう接していいかわからず、結局は放任主義になってしまう。部下育成ができない上司が増えていることと、子育てをうまくできない親が増えていること。部下を持ちたくない管理者が増えていることと、子を持つことにためらいを持つ親が増えていること。これらは決して無関係なことのようには思われず、発達心理学の本をふと手に取った。本連載では、そこで出会った「関係発達」という視点から、これからの部下育成についての提言を試みたい。
関係発達という概念
「関係発達」には、①1人の子どもの心的な成長が、周囲の人たち、とりわけ<育てる者>たちとの対人関係のなかで繰り広げられるものだという意味と、②「育てられる―育てる」という関係のなかで、<育てられる者(子)>と<育てる者(親)>の二世代の生涯の過程が同時進行しながら変容(発達)していくという2つの意味がある(鯨岡、2002)。
簡単には、①人は関係のなかで発達する、②育てられる者と育てる者の関係の質が発達する、とそれぞれ言い換えられよう。さらに、②を紐解けば、決して育てられる者だけが発達する存在なのではなく、育てる者も発達していくことが含まれている(※1)。