調査データファイル 第56 回 改正高年齢者雇用安定法への対応状況

65 歳までの雇用延長を義務化した改正高年齢者雇用安定法が、今年の4月からいよいよ施行される。改正法施行に向けた企業の取り組みは、高齢者雇用に対する意識や状況を一変させている。だが、定年延長や定年制の廃止ではなく、継続雇用制度で対応しようとしている企業の実態も見えてくる。
1. 改正高年齢者雇用安定法の施行
少子高齢化の進展に対応して厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられつつあり、それに対応して65歳までの雇用延長を義務化した改正高年齢者雇用安定法が、今年の4月からいよいよ施行される。60歳定年退職を前提としたこれまでの人事制度を、変更せざるを得ないという状況である。
改正高年齢者雇用安定法は、法定定年年齢の改正は見送り、60歳定年は現行のままであるが、段階的に65歳までの高年齢者雇用確保措置を企業に義務づけている。これまでは65歳までの継続雇用を努力義務としていたが、義務化されることによって、罰則こそないものの、違反している事業主に対しては、助言、指導、勧告等の行政指導が行われる。
したがって、罰則がないからといって悪質な違反をすれば、企業名が公表されたりするため、どのような形で社会的制裁が襲ってくるかわからない。雪印やライブドアにみられるように、最近の違法行為に対する社会的制裁は厳しいものがあり、コンプライアンス(法律遵守)が不可欠である。
改正法による65歳までの雇用確保措置としては、①定年年齢の引き上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止、のいずれかで対応することを義務づけている。なお、継続雇用制度における義務年齢の段階的引き上げのスケジュールは、平成18年4月~平成19年3月(62歳まで)、平成19年4月~平成22年3月(63歳まで)、平成22年4月~平成25年3月(64歳まで)、平成25年4月~(65歳まで)となっている。
2. 希望者全員の雇用義務
ところで、改正法案の審議において労使が激しく対立したのは、「希望者全員の雇用」についてである。これまで一般化していた再雇用制度においては、対象者を「会社が必要と認めた者に限る」といったケースが多く、65歳までの雇用確保措置としては、非常に制限されたものであった。
当然のことながら、労働組合側は対象者の範囲を拡げることを主張し、経営側は対象者を絞ろうとしたため、意見は対立したわけである。改正法はこうした対立を考慮して、両者の顔を立てたような内容となっている。