連載 目標管理はなぜうまくいかないのか 第2 回 職場における目標管理の問題をどう解決するか
前回は目標管理を実践している場で起こっているさまざまな問題について紹介した。目標管理を実施している企業では、このような問題のいくつかについて心当たりがあることと思う。それらは目標管理を通じてあぶりだされたマネジメント不在の実態ということではないだろうか。今回は、問題の一つひとつについてさまざまな企業の人事部が行っている対策例を紹介する。
目標管理をスムーズにするための対策と解決策
ケース1.目標管理が現場の実態に合っていない
さまざまな特性を持った職場に全社一律のルールを無理に当てはめようとすると、目標管理が現場の実態に合っていないという問題が生じます。これに対しては、次のような対策が実施されています。
ルーティン主体の事務業務が多い職場は、自分の裁量でできる余地は限られています。したがって、マニュアル通り行うことを目標とすることを認めたり、裁量のきく範囲での能率の向上や業務の改善ということを目標にしています。また、製造ラインではチーム全員が同じ目標(チーム全員の連帯責任)を設定することを認めています。
一方、秘書業務、クレーム対応業務、保守・点検業務など期初に目標が設定しずらい職場では、最初はできるところまでにしておき、確定してから正式に目標設定するという例も見られます。
また、「クレームを受けてから回答までの日数○○日以内の維持」とか「お客様の満足度が△△ポイント以上の応対の維持」というように業務遂行レベルで目標を設定することもできます。営業でいう売上高とか利益といったものとは性質が異なり、業務の結果ではなく業務遂行中のイメージはありますが、このような目標設定を認めている企業もあります。
ケース2.目標管理制度=人事評価制度という誤解がある
バブル崩壊後、成果主義に基づく人事制度を導入した企業の多くは、成果を人事評価の中心に据えると強調してきました。それによって目標達成度が、人事評価のすべてと誤解した一般社員が多くいました(図表1)。さらに、人事制度の一般社員への説明を管理者任せにした結果、目的やルールが正確に伝わらなかったことや、業績評価面談は実施するが行動評価に関する面談は実施していないことなども誤解に拍車をかけた要因でした。このような誤解を解くために、企業では次のような対応策を実施しています。
①人事評価マニュアルを全社員に配布する(従来は評価者だけに配布)。
②人事部門が直接一般社員に説明する(従来は管理者任せ)。
③目標達成度と評価と処遇の関係を明示する。
④成果を「目標達成度」と「目標以外の仕事の成果」の2つで評価する。
⑤業績面談以外に行動評価面談を実施する。
⑥管理者の面談スキル向上研修を開催する。