連載 部下育成の新キーワード関係性アプローチ 第5 回 提言編 仕事における独り立ち

部下育成は、日常業務のやりとりのなかで行われる。子育ても、子に食べさせ、風呂に入らせるといった身の回りの世話をしつつ、行われる。今回は、部下育成において、子育てでいうところの、「身の回りのことが自分1人でできるようになる」とは、どのようなことなのかについて考察する。
部下を頼りにする
先日、所属する部門の食事会で、高級鉄板焼屋に行った。メインディッシュのステーキの焼き加減をたずねられ、一生に一度しか食べられないのではないかと思うほどの高級牛を前に、一同口をつぐむ。「よろしければ、このお肉が一番おいしい焼き加減を私にお任せいただけますか?」との言葉に安堵し、いっせいに「お任せします」。これは、調理師の明らかに自分よりも高いスキルを信頼しているからである。
任せることが大事だとはわかっていても、自分よりもスキルが乏しい(と思いがちな)部下に「任せる」ことはなかなかできない。怖くて任せられないか(部下を依存させる)、任せても無責任にほったらかしにする(部下に依存する)。子育てでも、基本的生活習慣のうち、食事や着脱衣は特に、大人から見れば子どものそれはまどろっこしく、すぐ手伝いたくなるが、そうすることで自立を遅らせ、親に依存的な性格を助長してしまう。