連載 研修ファシリテーター入門誌上講座 第10 回 ファシリテーションにおける気合い
良い講師、ファシリテーターの条件として「気合い」が挙げられることが多い。どうすれば講義やインストラクションに気合いを込めることができるのか、今回は、そのヒントを考えてみたい。
人を動かす気合い
日本体育大学で、長年、社会教育の指導にあたられた平野仁先生は、NHKのラジオ体操の指導者としても活躍された方です。かけ声一つで、3,000 人の参加者に、いっせいに手を挙げさせることができる気合いの持ち主です。
講師・ファシリテーターの経験がある人にはわかることですが(そうでない人にはわかりにくいかもしれません)、「はい、手を挙げてください」とアナウンスすれば、手が挙がるというものではありません。3,000 人の1人ひとりが、インストラクターの声を聴き、その声を頭と心に響かせ、そして、肩や手の筋肉に指令を出して、実際に手が挙がるという現象が生じるまでには、実は、きわめて複雑なプロセスが働いていると考えられます。
機械仕掛けであれば、ボタン一つで結線された3,000 個のモーターを回すことが可能です。しかし、人間は、それぞれ個々別々に存在していて、リード線でつながっているわけではありません。
ですから、3,000 人全員に、物理的に声が届く、聞こえるというのは、最低限の必要条件です。もちろん、ある程度はマイク、アンプ、スピーカーなどのPA(拡声器)装置の性能にもよります。
しかし、同じマイクを使っているのに、人を動かせる号令と、全く人が動かない号令があるのです。これを「気合い」の違いと説明するのですが、それは何がどう違うのでしょうか。