CASE1 アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービス 有期雇用の「PC 型」、さらにはIC である「SE 型」を活かす組織へと、 プロフェッショナルがより活躍しやすい制度を導入

アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービス(IBCS)は、「プロフェッショナルに選ばれる組織」「心豊かな生活を支援する組織」を目指している。ただ、このような組織を実現しようとするときに、終身雇用、年功序列というこれまでの人事慣行で培われた「正社員」という雇用形態ではやはり限界がある。そこで同社が考えたのが、個人と会社がお互いに“Win-Win”になるような関係の働き方だ。同社は、従来型の期限を定めない雇用契約を残す一方、有期雇用契約であるプロフェッショナル・コントラクト型(PC型)、そして委任契約であるセルフ・エンプロイド型(SE型)と呼ばれるまさに「IC」を体現した働き方を用意した。これにより、同社の雇用制度そして人材活用の方向性は、大きく変わっていったという。この新人事制度導入を実行した人事部長・三巻由希子氏に、詳しい話を伺ってみた。
統合に伴い「新人事制度」を導入。3つの働き方を用意

2002 年10 月、日本IBM のビジネス・イノベーション・サービスとPwC(プライスウォーターハウスクーパース)コンサルティングの統合により「IBCS」が誕生した。PwC コンサルティングは、150 年以上の歴史を誇る世界最大の会計事務所PwC のコンサルティング部門。さまざまな業界を対象に、戦略立案からプロセス設計、システム導入・定着に至るまでのソリューションを提供してきたことで知られている。
両社の統合で誕生したIBCS の従業員数は約2,000 人に達し、IBM の最先端のe-ビジネスソリューションとPwCコンサルティングの革新的なコンサルティング実績が融合することになった。その結果、経営戦略立案からコンサルティング、各種ソリューションの提供、そしてアウトソーシングまでを包括的に提供できる組織が整った。問題は、そうしたサービスを提供する人材(コンサルタント)を、いかに活用していくかにあった。
統合後間もなく、人事制度の見直し作業を進めていき、04年から「新人事制度」の導入を行った。ここで、①従来型、② PC 型(プロフェッショナル・コントラクト型)、③SE 型(セルフ・エンプロイド型)という以下の3つの働き方(契約形態)を用意した(図表1)。
①従来型
雇用期限を定めない従来型の雇用契約で、IBM グループやIBCS スタッフ部門の人材に適用されるモデル。報酬については、レバレッジが過度に効いている内容ではないとのこと。
② PC 型(プロフェッショナル・コントラクト型)
社員ではあるが、有期の雇用契約。雇用期間は2または3年。従来型との違いは、「Pay for Performance」と「Pay Now」を徹底している点。「Payfor Performance」は、従来型よりもインセンティブプランがハイレバレッジであることが特徴。また、「P a yNow」ということで、従来型よりベネフィットを少なくした分、それを年俸へと反映させた形となっている。
③SE型(セルフ・エンプロイド型)
雇用契約ではなく、業務委任契約に基づく関係を会社と結ぶもの。いわゆる「IC」と呼ばれる形態と同じものである。求められる水準は高く、報酬についても、期間契約ではあるが、その“契約内容”に応じて決まっていく。図表1に示したように、ハイリスク・ハイリターンを体現する働き方の典型といえるだろう。ただ、個人で仕事内容は完結するわけではなく、IBCS としての協同作業(チームワーク)が重要となる。
力のある人に「魅力」を感じてもらえる会社へ

そもそも、なぜこのような先進的な制度を構築していったのか。人事部長の三巻由希子氏はこう語る。