連載 目標管理はなぜうまくいかないのか 第3 回(最終回) 目標管理のパラダイムシフト

本連載では、第1 回で成果主義に基づく人事制度が企業に導入されている今日、その中核となる目標管理について、いま現場で何が起こっているかということで、問題点を列挙した。第2回ではそれに対して人事部門としてどう対応しているかを紹介してきた。そこで第3回では目標管理の原点に返って、目標管理の考え方そのものを変えていくこと(パラダイムシフト)の必要性について述べる。
評価のための目標管理から経営目標達成のための目標管理へ
そもそも目標管理は人事評価システムとして生まれたものではなく、マネジメントシステムとして開発されたものです。
成果主義の考え方が導入され、個人の成果を何で評価するかという段になって、個人目標を設定し、その達成度で評価することとした経緯があります。しかし、目標設定において資格等級にあった適切な目標を設定することはかなり困難です。達成度の評価においても、環境変化や競争状況下での個人の貢献度合いを客観的に正確に把握することは至難です。
ここで原点に返って、目標管理を「経営目標達成のためのシステム」として構築し直し、評価制度も目標管理シートにおける個人目標の達成度合いをダイレクトに評価に反映させるのではなく、「経営(上位組織)目標の達成に貢献したかを評価するシステム」にする必要があります。以下、この視点からいくつかのポイントを提示します。
(1)制度設計を経営企画と一緒に作成する
目標管理を経営目標達成システムと定義すれば、目標管理の制度設計も運用も人事部門の専任事項ではなくなります。むしろ、経営企画部門が主管する方がふさわしいと言えるかもしれません。
現状多くの企業では、経営企画部門が経営目標達成のために中期経営計画、年度業務計画、予算管理などを管掌し、そのための仕組み(体制、ルール、手順)、ツールをもって運用しています。一方、人事部門は人事評価のために目標管理を主管しています。2つのマネジメントシステムが関係性を持たずに動いている状態と言えます。
全社の目標管理を動かすのは本来経営企画部門の役割です。全社目標から部門目標への連鎖を検討し、業績管理指標を決定し、全社成果に対する部門ごとの評価ランクを決定するなどが主要なものです。
人事部門の役割は、目標達成活動を個人に落とし込む際に、管理者や一般社員が上位との連鎖を踏まえた目標を設定し、その達成度の評価が適切にできるように支援すること、業績による賞与原資の配分を決定すること―などを行うという位置づけであるべきです。
以上の点から目標管理制度設計は、経営企画部門と人事部門が協働して行わなければならず、運用における分担事項についても明確にしておかなければなりません。
(2)上位方針、目標への参画度を高める
目標管理が経営目標達成のためのマネジメントシステムであるという視点からは、管理者や一般社員が上位方針、目標への参画度を高めるような仕組みをつくることが必須です。目標達成ができるかできないかは、実行する当事者の意欲を高めることにかかっています。そのためには、目標設定に参画していることが重要です。
参画度を高める仕組みとして、上位(部門)方針決定への参画があります。下位者からの短期、中期の方向性や課題に関する意見を上位方針に反映できるようにします。さらに参画度を強化するには、目標達成の裏づけとなる予算づくりの場にも参画できるようにします。このようなことができる仕組みとして、上位方針検討ミーティングなどを制度化します。
もう1つは、管理者層が目標を検討する時期を1 月(期初から3 カ月前)から始めるような仕組みをつくります。現状多くの企業では、十分な検討や意見交換なく4 月(期初)から管理者や一般社員が目標設定をしています。しかし、上位から順次、関係者の十分な検討と意見交換を踏まえて目標が下位に降りてくることが重要です。これによって、それぞれの階層で管理者や一般社員が上位目標に参画できる状態をつくれるようになります。