連載 Talent Management 優秀な人材が離れない! ~人を育てる魅力ある企業へ~ 第3 回 タレントマネジメントの実現 その2 優秀な人材が離れない評価制度
企業の持つマンパワー(人材力)を最大化し最適配置するためには、「人を管理するのではなく、人が持つ能力(タレント)を管理する」というタレントマネジメントの考え方が非常に重要となる。この実現には、①全従業員が同じ方向を向いて仕事をする ②優秀な人材が離れない評価制度 ③モチベーションの底上げのための教育 ④適切な人材を適切に配置する組織マネジメント――の4 本の柱を組み合わせた人事戦略が必要となるが、今月は特に2つ目の柱である、「人材の評価」について解説したい。
成果主義は悪か
評価の話をする時に、必ず話題となるのが「成果主義」という言葉である。よく「日本企業には成果主義は馴染まない」や、「成果主義は失敗事例が多い」という話を耳にする。実際私の顧客からも、「数年前にコンサルタントを雇って導入したものの、従業員からの不満が大きい」「導入を試みたが組合との調整がうまくいかない」という話をよく耳にする。
しかし、これは「成果主義」という言葉にやや振り回されてしまっているケースが多い。
私は、「成果主義」とは単に「従業員の評価に差をつける制度」ではなく、「従業員のもつ能力を最大限に引き出すための制度」であると考えている。
前回「三本の矢」の話をしたが、人材の力を最大化するためには「従業員のモチベーションを高めること」と「同じ方向を向いて仕事をすること」が重要となり、成果を上げた従業員に対してきちんと評価を行い、処遇をすることは必要なことである。よって「成果主義」という言葉のイメージにとらわれず、良い点をいかに評価制度に落とし込んでいくかという点について考えていきたい。
仕事の結果と仕事のやり方を公平に評価する
成果主義が失敗してしまう1つの大きな要因は、「成果」だけで評価をしようとしてしまう点である。これは「人材」の評価としてはバランスを欠いている。成果だけで評価すると、「自分の目標が達成できればよい」や「要領よく結果だけ残せばよい」という風潮となり、モラルが低下し公平性が著しく損なわれる。しかし、だからといって仕事をしてもしなくても評価は同じというのでは当然従業員のモチベーションは上がらない。よって、人材を評価する際には、「成果」=パフォーマンスと、「能力」=ポテンシャルの2つの要素で評価をしていくことを私はお勧めしている。これにより、がんばった従業員には相応に報いつつ、公平性を維持することが可能となる。
成果の評価と能力の評価は全く性質が異なる。つまり成果とは「能力の使い方」であり「能力の高さ」とは必ずしも一致しない。仕事の成果は、個人の能力以外の要素にも大きく影響を受けるため、成果と能力は異なる指標で評価し、処遇への反映の仕方も変えていかなければならない。例えば、私は顧客との会話のなかでよくこういった話をする。