連載 ロジカルコミュニケーションのススメ 第2 回 本当に言いたいことを わかりやすく伝えるために

コスト削減を実現するためのコミュニケーション力向上スキル
コミュニケーション力とは、自分のことを相手に理解してもらい、相手のことを理解する能力のこと。そのためには、論理的に思考する訓練が必要だ。今号では、論理的思考に有効な「情報の構造的整理法」の3つのステップについて解説する。
日本人はなぜ話がヘタなのか
前号で、日本人は世界で最も「ハイコンテクスト文化」の国にいるが故に、論理的に話したり聞いたりすることが得意ではないと解説した。そうであっても、実は私は日本人の話し言葉は美しいと思っている。日本語の話芸の素晴らしさ!
落語はその最たるものだ。
落語の良さはプロセスにある。結果にたどり着くまでに敷かれた伏線が最後のオチを盛り上げる。落語は、結果よりもプロセス重視の話し方を好む日本人が磨いた芸術といえよう。とはいえ、いくらプロセスが好まれるといっても、結果までたどり着くのに20分かかる、ではビジネスの現場ではいただけない。当然、グローバルなビジネスシーンではこの話し方は通用しない。
もはや職場は、ハイコンテクスト文化の場ではない。職場におけるコンテクストは、主に共有時間や共有体験によって形成される。ある社風のもとで、同じような仕事の進め方や考え方を持つ者同士が長く一緒に仕事をやっていればコミュニケーションは円滑だ。しかし、中途採用者や社歴の浅い社員とはコミュニケーションの効率は低下してしまう。さらに、合併・吸収や異業種間のコラボレーションなどによって共通の基盤を持たない相手とのコミュニケーション機会は飛躍的に増大し、以心伝心による曖昧で緩慢な情報伝達は通用しない。
次のような点が、プロセスを重視しがちな日本人の話し方の問題として指摘される。
話し手が話す内容を十分に整理しないまま話を始め、話の内容が連鎖的に展開してしまう。
・テーマがわかりにくい
・論点が飛躍する
・話が拡散する
・話の展開が読めない
こういう状況では、聞き手の負担も大きくなる。話し手ですら予測がつかない話をひたすら追い続けなければならないからだ。そこで聞き手は、印象に残った個々の情報を組み立て、独自の理解をする。これが当たればいいが、外れると話し手が意図したものとまるで異なる内容を聞き手は理解することになる。
ではどうするか。
情報を構造化し、話の設計図をつくるのである。設計図は、情報を図解化し、整理・作成していくというものだ。ただしここでは、大きな発想の転換が求められる。図的整理というとキーワードを羅列してまとめていくKJ 法的なものをイメージしがちだが、これとは異なる。だらだらと話した後に内容をまとめても、本当に言いたいことがわかりやすく伝わらないからだ。
この設計図は、話を論理的に伝えるために情報を「大局から細部へ」と整理していく。では、「大局から細部へ情報を整理するためにはどうすればいいのか。さらに言えば、日本人に欠如している論理思考をいかに身につけるか。具体的な手法について、解説しよう。