連載 調査データファイル 第63 回 継続雇用者の選別基準
今年4 月1 日に施行された「改正高年齢者雇用安定法」では、急速な高齢化の進行などに対応して、高年齢者の安定雇用確保を図るため、①事業主は定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければならないことになった。前号では、その対応として、選別的継続雇用制度を導入し、一定の基準を設けて継続雇用の対象者を選別しようとする企業が圧倒的に多いことを調査データを通じて明らかにした。本号では引き続き、どのような継続雇用者の選別基準を設けているのかということについて、見ていくことにしたい。
1. 大半の企業は継続雇用制度で対応
前回、「改正高年齢者雇用安定法」への企業の対応状況について紹介した。しかし、厚生労働省の調査結果には、最も気になる継続雇用者の選定基準が、明らかにされていなかった。
最近発表された産労総合研究所の調査結果には、この選定基準が明らかにされており、「2006 年中高年層の処遇と継続雇用制度の実態に関する調査」(「賃金事情」06年9月20日号)によれば、以下のような実態が報告されている。
同調査は06年6月下旬~7月中旬にアンケートにより実施された。回収企業数は337 社である。厚生労働省の調査に比べて分析対象企業が著しく少ないという難点はあるが、継続雇用者の選別基準に対する企業の姿勢を知ることができる。
まず、雇用延長の方法に関しては、「継続雇用制度で対応した」(93.2 %)が、9割以上を占めていた。これに対して、「定年年齢の引き上げ」(6.3 %)は3社、「定年制度を廃止した」企業は1社もなかったという結果であった。
こうした結果は、前回紹介した厚生労働省の調査とほとんど同じであり(「継続雇用制度の導入」93.2%、「定年年齢の引き上げ」6.3 %、「定年の定めの廃止」0.5 %)、改正高齢法への企業の対応方法は、労働条件などを再設定しやすい継続雇用制度が主流となっている。
また、継続雇用制度を導入した企業について、その対象範囲を調べた結果によれば、「希望者全員」(20.0 %)とする企業が2割であり、「対象者を限定した」(79.7%)企業が約8割を占めている。その結果は、厚生労働省調査の結果(「希望者全員」(20.4 %)、「一定の基準を定めて対象者を選別」(79.6%)と、ほとんど同じであった。
なお、産労総合研究所の調査結果によれば、対象範囲に関しては従業員規模によって違いが見られ、「希望者全員」とする企業の割合は、規模が小さくなるほど高くなっている。すなわち、1,000人以上の大企業では、その割合が3.3 %にしか過ぎないのに対して、300~999人の中堅企業では17.7 %、299人以下の中小企業では27.7%となっている。対象者の人員規模が大きく、しかも年功賃金によって高齢者の賃金水準が高くなっている大企業ほど、継続雇用の対象者を限定する傾向が顕著となっていることを示している。