連載 人材教育最前線 第11 回 勇気をもって、前へ一歩踏み出す 自己革新できるリーダーを育成したい

入社3 年目にして社内起業家のような立場に大抜擢され、次は社長秘書、そして現在は次世代リーダー育成にかかわる仕事に従事している山川氏。ものごとの核心を突く歯に衣着せぬ物言いで波紋を起こし、「アンファン・テリブル」と称されたりもするが、周囲を巻き込み変革を進めている存在だ。使命感と情熱をモットーとする山川氏が、「人」に対する思いを熱く語ってくれた。
スキー場開発を夢見て東京急行電鉄を志願
一見したイメージは、日焼けして引き締まった身体のスポーツマン。数年前からサーフィンを始めたという。学生時代は競技スキーに打ち込み、優秀な成績を残した。スキー場開発にかかわることを夢見て、東京急行電鉄を志望したという人物だ。
「欧州のアルプスに匹敵する美しい景観の白馬に最初にスキー場をつくったのは、東急グループだったのです」
入社後、駅係員や車掌といった鉄道の現場や、ガソリンスタンドの営業の第一線、予決算など管理的な仕事や企画業務などを経験した後、スポーツ事業の担当へ。ここで、結果としてスキーではなくゴルフと縁が深くなった。
入社3 年目にゴルフ練習場のリニューアルを全面的に任され、完成後、そのまま26歳にしてゴルフ練習場の支配人に指名された。異例の大抜擢で、企画から営業まですべてをこなし、社内起業家に近い経験をした。
次のキャリアは社長秘書。経営者と身近に接し、吸い取るように多くのことを学んだ。ただ、本人にしてみれば「言いたいことが言えない、つらい時期だった」ともいう。なるほど、秘書は陰に寄り添う裏方の存在であるが、山川氏はもともと「アンファン・テリブル」と呼ばれるほど、自己主張の強いタイプ。「こうあるべきだという信念や、もっと良い方法があるはずだという探究心が強すぎて、気がつけばいつも周囲をかき回している」という。
人事部門に移ってから8 年になる。肩書きの「主幹」とは課長相当。本人は「偶然」というが、社内起業家→社長秘書→人事というコースは、何か見えない糸でつながっているように感じさせるキャリアパスだ。
最近手がけた大きな仕事が、経営者の後継人材育成の場である「東急アカデミー」(コーポレート・ユニバーシティ)の創設。この構想は、2005 年4月から始まった中期経営計画に連動したものだった。
「東急グループにとって、その前の5 年間は足元固めの時期であり、いわばジャンプをする前に力を溜め込むために膝を折って、小さくなった状態でした。この時期、リストラも行いました。でも、これからは、溜め込んだ力を一気にはき出して、越村社長の強いリーダーシップのもとで成長戦略を力強く実行していきます」
成長戦略とは、“イノベーション、創造的革新”を合言葉に、2015 年までに「東急沿線が選ばれる沿線として勝ち残り、東急グループが強い利益集団になること」を目指すというもの。
山川氏が所属する人事企画部は、組織上、経営統括室の中に経営企画部、内部統制推進部とともに併設された3つの部署の一つで、経営戦略と直結した人事戦略を担う。
「私たちは人を大切な財産と考え、採用、育成、活用のそれぞれの場面に応じた施策を立てていきます。2000 年度からの5 年間は、主に人事制度などのインフラ整備を中心に行ってきましたが、これからは社員の力を高め、能力を蓄積していく時期に当たります。その中の最重要課題がプロ経営者の育成で、市場競争に勝てるリーダー人材の育成を図っていくものです」
その舞台として用意されたのが「東急アカデミー」だ。
視野を広げ視座を高め価値観を変える
東急アカデミーは、対象とする階層別に2つに分かれている。
一つは創造的リーダー育成プログラム(CLDP = Creative Leadership Development Program)であり、次期部長候補となる課長クラスを対象としたものである。事業を創造できる人材の育成を到達目標として、「視野を広げる教育」を行う。
もう一つは、変革型リーダー育成プログラム(ILDP = Innovative Leadership Development Program)である。このプログラムは、次期執行役員・取締役候補となる部長クラスが対象。既存の事業や会社をリノベーションできる人材の育成を目指し、「視座を高める教育」を行おうというもの。さらに、この2 つのプログラムを通じて横断的に実施されているのが「人間力講座」である。
「ビジネスに直接関係のない、科学、思想、歴史といった話を専門家に語っていただき、受講者の価値観を広げ、高めて、大局観を養う場にしたいと考えています」