短期連載 マルチ・リーダー時代のリーダーシップ革新 後編 フォロワーシップ・リーダー育成のすすめ

先月号では、優れたリーダーシップは優れたフォロワーシップによって支えられることと、優れたリーダーシップが発揮されている場では、リーダーシップとフォロワーシップは動的に交替しながらリーダー行動が展開されているということを説明してきた。今号では、これをベースにして、これから求められるマルチ・リーダー組織において、大きなパフォーマンスを発揮するフォロワーシップ・リーダーに求められる課題と、その育成のためのヒントを考えていくことにする。
マルチ・リーダー組織の有効性を示したオルフェウス・プロセス
本誌11月号では、スピードのある変化に柔軟に対応する組織づくりには、フォロワーシップ・リーダーの存在が欠かせず、その育成が大きな課題になっていることを述べた。
この課題を追究するための優れた事例の一つのとして、「リーダーのいないオーケストラ」として知られるアメリカのオルフェウス室内管弦楽団の組織の仕組みがある。
この仕組みは「オルフェウス・プロセス」と呼ばれているが、その運営の特徴は、図表1に示すような8つの原則に基づき、各専門部門の代表で構成される「コア」と呼ばれるリーダーチームによって運営されていることである。
ハーヴェイ・セイフター(元オルフェウス・エグゼクティブ・ディレクター)とピーター・エコノミー(編集ライター)は、「この理論が1990 年代を通じてアメリカの企業社会を変革してきた」というニューヨークタイムスの記事を引用しながら、JPモルガン、リッツカールトンホテル・カンパニー、サンディエゴ動物園などでのオルフェウス・プロセスの導入事例を紹介し、この8つの原則の一つひとつを、ほとんど研修マニュアルとして適用できるほどの詳細さと具体性を持って検証・紹介した。(1)
このプロセスの鍵は、リーダー・チームである「コア」によって、戦略の開発から製品(音楽)の開発、ユーザー(演奏家)への製品引き渡しまでが行われるところにある。
これについて、セイフターらは「役割の明確なリーダーシップの共有と交替を可能にする」マルチ・リーダー組織であると指摘し、「誰でもリーダー」を目指す組織行動理論を基礎とした、一定の専門領域や業務領域の知識と経験のある者が保有するべきリーダーシップ技術を明らかにした(図表1)。
このようなリーダーシップ技術者によって構成されるビジネス集団は、効果的に業績達成を目指すことのできる、優れて戦略性に富んだ組織といってよいだろう。

マルチ・リーダー組織をどのようにつくるのか
そこで、課題となるのは、オルフェウス・プロセスを機能させるようなマルチ・リーダー組織をどうやってつくるか、ということになる。
このような考え方のリーダーシップ育成をサポートするものとして、米国のアチーブ・グローバル社のH.バーグマン、K.ハーソン、D.ラスエフトの3人が99年に発表した研究レポートがある。同社は、タイムズ・ミラー・カンパニーのパフォーマンス・スキル研修コンサルティング会社として知られる。
この研究レポートのタイトルは、そのままずばり「Everyone a leader」(誰もがリーダー)である。(2)
著者たちは90年代初頭から数年間にわたり、ある調査を手掛けてきた。1950 年以降の全米の成功企業450 社のCEO やCOO をはじめとする全階層のマネジャー2,000人を対象にインタビューを行ったのだ。それに基づき、日常業務のなかで直接リーダーシップ機能を果たす役割を持ったすべての階層の人のための、リーダーシップ・モデルの運営手引書として執筆されたものが、このレポートだ。
このレポートのなかで、企業改革に有効に働くリーダーシップの特質を図表2に示すような5つにまとめている。

英語の頭文字を組み合わせたCLIMBが、このモデルの名称となっている。(3)
アチーブ・グローバル社は、これをもとに、「リーダーシップ・フォー・リザルト」(LFR)と名づけたリーダーシップ研修プログラムを発表した。日本でもアチーブ・グローバル社とパートナーシップ関係にある富士ゼロックス総合教育研究所が、日本でトライアル・セミナーを実施したうえで日本版「LFR」を作成している。
筆者も、このプログラムのインストラクターとしてのトレーニングを受けたが、これはリーダーシップの目的が業績達成であることを明確にし、マルチ・リーダー組織の実現||「誰でもリーダー」を実現するためのプログラムといってよいものである。
このモデルの考え方を理解するために、先のレポートの目次タイトルを紹介しながら、若干の説明を加えていくことにしたい。
このレポートは、7章からなる解説とリーダーシップスキルを練り上げるための研修手引きで構成されている。
変化の時代にあっては、リーダーシップは企業幹部だけに発揮が求められるものではないというのが、このプログラムの前提である。
問題を感じた者はリーダーである
第1章のタイトルは、「あなたがしなければ誰もしない」である。
あなたがどのようなポジションにいようが、調査結果が示唆する第一の結論は、問題を感じたあなたが、リーダーシップを発揮しなくてはならない、ということである。著者たちは、そこで第1のステップとして自己評価から始めることを助言し、まず、リーダーシップをとる立場になった時の自分の弱点を明確に把握することを薦めている。
第2章以下で、本題のCLIMB を一つずつ追求する。