連載 Talent Management 優秀な人材が離れない! ~人を育てる魅力ある企業へ~ 第9 回(最終回) タレントマネジメントの実現 その7 タレントマネジメントとIT の活用

企業の持つマンパワー(人材力)を最大化し最適配置するためには、「人を管理するのではなく、人が持つ能力(タレント)を管理する」というタレントマネジメントの考え方が非常に重要となる。この実現には、①全従業員が同じ方向を向いて仕事をする ②優秀な人材が離れない評価制度 ③モチベーションの底上げのための教育 ④適切な人材を適切に配置する組織マネジメント――の4本の柱について解説をしてきたが、最終回の本号では、タレントマネジメントを運用する際に必要となるIT の活用方法とその導入手法についてご紹介したい。
制度設計とIT 設計を同時に行う
タレントマネジメントの4つの柱を実際に運用するとなると、スキルやキャリアパスを始め、評価や教育の情報など、非常に多くの情報を管理していくこととなる。これらの情報管理のためIT を活用していくわけだが、IT の仕組みを導入するに当たり、よくお聞きするのが、「IT を使わなければとても運用できないことはわかるが、一体どのような観点でIT化を考えていけばいいのかよくわからないし、相談できる人もなかなかいない」ということである。
確かに、日本では現状、制度設計の支援をしてくれる人事コンサルタントと、IT 化を支援してくれるIT コンサルタントのサービス範囲の棲み分けが明確なケースが多く、両方を併せて支援してくれるというベンダーはまだ少ない。
しかし、「以前つくった人材育成制度は、運用のことやITを考慮しておらず、業務に非常に手間がかかり、せっかく立派な制度をつくったのに数年後には使われなくなってしまった。よって今回は必ず運用できる制度にするためにも、最初からITを考慮したうえで制度設計をしたい」という思いもやはり多くの顧客の切実な声であり、私がいただくご相談としても最も多い内容である。
人材育成の制度は1年運用すればそれですぐに成果がでるというものではない。何年にもわたって運用を続けることで大きな効果を生み出すものである。そのようなことから、せっかく知恵をしぼって設計した制度も、いざ運用となるとIT化に非常に多くのコストがかかってしまう。ITを活用できないままで運用することで業務コストが膨大となり、数年で使われなくなってしまうということでは、全く意味のないものとなってしまう。
これからの人材育成の制度設計は、ITの設計を最初から意識し、両方を並行して進めていくことが成功のための大きなポイントである。実はタレントマネジメントは、このIT化を最初から意識して設計されたフレームワークである。このフレームワークを利用して制度設計していくと、自動的にITの設計ができていってしまうという点で、既存のフレームワークとは全く異なるメリットをもっている。
IT を意識した制度設計~ 2 つのポイント~
