連載 リード・マネジメントで、組織を変える! 第4 回(最終回) 自己評価のための画期的マネジメントシステム

本連載もいよいよ最終回を迎えた。過去3回にわたって、ボス・マネジメントからリード・マネジメントへの転換がマネジメントの成果を引き出す重要なステップになることを説明してきた。今回は、その総仕上げとして、リード・マネジメントの自己評価の画期的マネジメントシステムである「モチベーション・セラピー」の概念について述べてみたい。
リード・マネジメントの前提となるよい仕組みづくり
本連載において、今まで3 回にわたり、さまざまな視点からリード・マネジメントの本質について言及してきた。
それらは私からの警鐘であり、“マネジャーが人の心の働きに反するマネジメントを行えば、部下が離れ、必ず失敗に至ることをよく理解してほしい”というものだった。
端的にいえば、人のモチベーションについて考える時には、いわゆる従来の外的コントロール的アプローチ(ボス・マネジメント)を改め、回り道のように見えたとしても、人という存在そのものを尊重したリード・マネジメントへと変革してほしいということである。それが正道であり、本来のマネジメントのあるべき姿であり、必ず成果となって表れてくるということを述べたかったわけである。
多くのマネジャーは、そのことに気づいてはいても、人間尊重のリード・マネジメントを実践することができないでいる。それは、企業側が経済合理性を追求するあまり、どうしても目先の損得に囚われ、人間関係を破壊するボス・マネジメントに頼ろうとする傾向があるからである。
私も、企業経営とは、決してきれいごとばかりではなく、あくまで営利活動を目的としており、最終的に経済に帰結していかなければならないことは十分理解している。だが、そのうえで人間関係を犠牲にしてはならない、というのがリード・マネジメントの主張であると言いたい。
マネジメントの成否は、ある組織の目的・目標を達成するために、「人・モノ・金」をいかに効果的に活用できるかにかかっており、マネジャーは、その成果に責任を負っている。
私は、この連載のなかで、リード・マネジメントの特長は、職場の人間関係が最良・最善・最高でありながら、なおかつ高い業績を生み出すことができるという「現代の魔法の杖」のようなマネジメント手法であると述べながら、いくつかの手法を紹介してきた。
私はあくまで、その前提になるのは、よい仕組みづくりだと思っている。悪い仕組みのなかには、決してよい成果は生まれないからだ。
よい仕組みというのは、経営者の核となる考え方や、商品戦略、マーケティング戦略、人事戦略等の統合などがきちんとなされているものである。そこには、限られた資源、限られた制約条件が存在し、マネジャーは、そのなかで最も高い生産性を上げる責任を持っているわけだ。
今回は最終回として、そのことを踏まえつつ、自己評価の画期的マネジメントシステムである「モチベーション・セラピー」の概念についてまとめてみようと思う。
モチベーションを促す3つの要素
繰り返しになるが、私はこの連載のなかで、人のモチベーション(内発的動機づけ)を促すには3 つの要素があると述べてきた。
1つ目は「5つの基本的欲求(生存・愛と所属・力・自由・楽しみの欲求)」からくる遺伝子からの指示。
2つ目は、その遺伝子を満たすと思われる人やモノ、情況や価値観、自分が大切にしているイメージの世界(「上質世界=クオリティ・ワールド」)。
3つ目は、そのイメージを現実に求めて人が行動していく際の“苦痛から快感への移行(プラスに働く場合もあれば、マイナスに働く場合もある)”である。