連載 データから見えること第3 回 企業が持つ人事・教育領域での課題
景気回復、2007 年問題、失われた10 年で抑制された雇用とリストラ。さまざまな要因により、現在、企業ではマンパワー不足が浮き彫りになり、企業間の人材確保の競争は熾烈になりつつある。
現在の日本企業が持つ経営課題を、人材確保の観点から読み解いていく。
“非正規社員活用による正社員採用の抑制”からの脱却
今日、バブル期以来の売り手市場が到来したと言われているが、日本経済新聞社の『2007 年度採用計画調査』によると、新卒採用者数は前年度比で約2割増加し、主要企業に限れば4年連続で増加しているという。団塊世代の引退いわゆる2007年問題やバブル崩壊以降長く続いた採用の抑制と人員削減中心のリストラ策、いざなぎ景気を超える景気拡大など、ここに来て企業のマンパワー不足を助長する要因が重なり、人材獲得競争は激化の一途をたどっている。一方で厚生労働省の『労働経済動向調査』(図1)にもあるように、常用労働者の不足感は拡大し続けており、今後は採用したくても採用できない企業が増加すると予想される。
社団法人日本能率協会の『当面する企業経営課題に関する調査』においても、“人材確保”が企業の課題として見て取れる。この調査は日本企業の経営課題を明らかにするために、同団体が1979 年より毎年実施している調査で、グラフのデータは“企業が人事・教育領域でとくに重視している課題”について抜粋したものである(図2)。“新卒採用の強化”は、前年度16項目中10番目の重視レベルであったが、今年度は前年度比7割以上増加し、6 番目の課題として重視されるようになっている。絶対的な重視レベルでは“次世代の経営層の発掘・育成(29.6%)”や“社員の専門能力強化(25.3%)”に及ばないものの、これらの課題は前年度よりも重視レベルが低下しており、現有人材の強化だけでは経営が立ちゆかなくなった(あるいは近い将来立ちゆかなくなる)現状がうかがえる。