人材教育最前線 カレッジ編 ミスタードーナツ 時代が求める店主像は リーダーシップ発揮型から ファシリテーション型へ
外食産業のフランチャイズ展開としては、先駆け的な存在のミスタードーナツ。日本国内だけでも1300 におよぶ店舗数で同様のサービスを行う裏には、独自のカリキュラムによる“MD カレッジ”の存在がある。創業以来36 年間、ミスタードーナツの基礎を教育してきた“MD カレッジ”と、求める社員像について聞いた。
フランチャイズ展開を念頭にいち早く研修施設を設立
ダスキンのフード部門として立ち上げられたミスタードーナツは、1971 年4 月、大阪・箕面市にパイロットショップとして1 号店を出店。以来、直営店・フランチャイズ加盟店を合わせて、現在までに、国内で1300余店を数えるほど飛躍的な成長を遂げた。創業以来、顧客満足度も常に上位にランク付けされるフランチャイズの雄である。
しかし、その躍進の試金石となったトレーニングセンター(現ミスタードーナツカレッジ=MDカレッジ)が、1号店の出店からわずか半年、2 号店の出店を待たずに創設されたことはあまり知られていない。当時の飲食店の事業展開は、1 号店で修行を積んだ職人たちに“暖簾(のれん)分け”する形で2 号店を出すのが常だったからだ。
MDカレッジは、「たかがドーナツ屋が……」との周囲の冷ややかな視線を浴びながらのスタートとなったが、今となっては、創業者・鈴木清一氏の先見の明を認めない向きはいないだろう。
現在、このMDカレッジの学長を務める岡本正寿氏は往時を振り返る。「ミスタードーナツでは、スタート時から資格制度がありました。研修期間も現在に比べれば長期間でしたが、一度取得すれば半永久的に店舗経営できるというものでした。ただし、1 号店を立ち上げてから15 年目の1985 年、製造技術が進歩し、求められるサービス内容が変貌を遂げる中、“第2の創業”を期して、商品、店舗、教育もリニューアルしていこうということで、自動車免許と同じような免許更新制度を導入しました」
定期的な更新が必要なこの免許更新制度が、他社に先んじていたことは言うまでもない。
MDカレッジで一定の技術レベルを身につけて卒業しても、現場で日々仕事に追われるうちに技術が落ちる人、モチベーションが萎えてくる人が少なからず出てくる。売上げが好調になればなるほど多忙を極め、事業本部が発信する最新の情報に目が行き届かなくなる人が出てくる。意識せずとも手抜きを覚えてしまう人もいる。集中力は長続きしない。そうした弊害を見越しての英断だった。
創業36年、免許更新制度を導入してから21年。今現在、MDカレッジの卒業生は7000余名、免許の更新コースは517回を数えるまでになった。
「2年に1回の免許更新は、自分自身を客観的に見直すいい機会にもなっていると思います。お店に出ていると忙殺されて、なかなかそんな機会はありませんから」