巻頭インタビュー 私の人材教育論 メンバー全員の力を引き出す 「気持ちの集団」の創造は リーダーの情熱があってこそ
「豊かで快適な生活文化の創造」を使命に水まわり空間の総合メーカーとして、その技術が世界で注目を集めるTOTO。
地域密着型の増改築の創造を狙ったリモデル事業に注力し、「TOTO の原動力は、お客様との接点の場であるリモデルクラブ店とショールーム」と語る木瀬社長に社員1人ひとりがイキイキと働く環境づくりについてお伺いした。
感動しなければ商品は売れない
── TOTOグループ社内報『陶友』を拝読させていただきましたら、“木瀬社長”ではなく“木瀬さん”と記されていました。巻末には“-木瀬さんと行く- We are the TOTO GROUP”という連載が掲載されています。木瀬さんという表記が新鮮であったことに加え、グループ会社のスタッフの方々に囲まれているお写真など、TOTOはトップとスタッフの距離が実に近い会社だと驚きました。
木瀬 照雄
(※以下、木瀬とする。敬称略)
社長就任以来、私は毎月、TOTOのグループ会社を回っています。ご覧いただいたのはグループ内に1社ある、リモデルクラブ店を訪問したときのものです。
リモデルクラブ店とは、TOTOが認定した地域密着で増改築を行う水道工務店や設備店を指します。リフォームプランのご提案や施工をはじめ、部品の調達、器具の修理・アフターサービスまで、お客様が描く理想のリモデルを実現するための総合的なお手伝いをしています。
── TOTOは、リモデルクラブ店の充実に注力されていますね。
木瀬
この10年間、TOTOの業績を引っ張ってきた原動力はリモデル需要です。ですから、リモデルクラブ店を、いかに充実させるかがTOTOの成長戦略の鍵。お客様との接点の場でもあります。ついに、リモデルクラブ店は全国で5,000店ものネットワークができました。
この原点なのですが、実は町の水道工事店の奥さんなのです。
入社10 年目、32歳で私は千葉県柏市に新しくできた営業所の所長になりましてね。その時、駅前で商売していた工事店の奥さんが、店舗を改造して、ぜひ商品を飾りたいと営業所に相談に来たのです。私が相談に乗って、まずは柏営業所の内装を請け負ってくれた会社に見積もりを出してもらいました。なんと費用は900 万円。心配だから保証してほしいなどという話まで飛び出しまして……。とにかく実現までいろいろと大変でした。
ところが、店舗改造が実現してショールームがオープンした途端、これがものすごく評判になった。
店は柏駅のそばにありましたから、通勤で朝晩ショールームを目にした人たちから、次々と注文が入ったのです。
── 最新の商品を実際に目にして、自宅の設備が旧式の使いづらいものだったことに人々が気づいたのですね。
木瀬
これに刺激されて、近所のタイル店も同様のショールームを併設したところ、問い合わせが東京からも来た。東京にはそんな店はないと言うのです。応接間の色を選んでほしいという注文に、タイル店のご主人が驚いてしまって。なにしろ、そんなことやったこともなかったですから。
実際に商品を見ていただいて、お客様に感動していただかないと、商品は売れないということを、私はここで学んだのです。
── ここからTOTOのリモデルクラブ店のネットワークづくりがスタートしたというわけですね。
木瀬
そうです。2 年後に千葉営業所に移った時は、各市一軒ずつ増改築できる店をつくるよう担当者を配置しました。
口コミを広めるためにキャンペーンを企画
── 木瀬社長が柏営業所長だった1980年、TOTOは『おしりだって洗ってほしい』のCMで話題を呼んだウォシュレットを発売しています。
木瀬
柏営業所2 年目の年でした。しかし、ウォシュレットについては千葉営業所時代の思い出が強烈です。