人材教育最前線 プログラム編 中編 東京電力 自立・自律した人材として競争時代を勝ち抜く 30 歳を到達点とした「実践力開発プログラム」 ―研修の実施―
管理職に必要な能力を身に付ける年齢を、今までの45 歳平均から30 歳と15 年前倒しにした技術者養成のための「実践力開発プログラム」。20 代で徹底的に鍛えるこのカリキュラムは、18 歳~ 30 歳までの技術者を3 つのステップを踏んで、長期間で育成するという画期的なもの。
3 回連載の第2 回目は、昨年9 月からスタートした「実践力開発プログラム」の研修について紹介する。
上司にも「上級指導者研修」で意識を変えてもらう
東京電力が2006年9月からスタートさせた実践力開発プログラムは、研修(フェーズ1)と職場実践(フェーズ2)の2つの場面がある。研修ではそこで身に付けたことが、職場においてもスムーズに実践できるイメージが描けるように、内容や順番が決められている。しかし、その説明の前に、このプログラムにおいて一番の特徴とも言うべき、もう1つの研修の話をしておこう。それは実践力開発プログラムの参加者の上司を対象とした「上級指導者研修」である。
技術研修部の方波見力氏はマネジャーを集めた研修の狙いをこう明かす(以下発言部分は同氏)。
「上司なくして部下育成はあり得ません。部下だけが研修でいいものを身につけて帰っても職場で押さえられたり、つぶされてしまっては意味がないのです。部下が改善・改革を提案しても、上司が無関心であったり『無理だ』と言えばそれで立ち消えです。部下が研修で改善・改革の提案を学ぶのであれば、上司もそれを後押しする考え方に変えなければいけないのです」
部下は「研修→職場実践」というサイクルを回しながら、レベルを「ステップⅠ→ステップⅡ→ステップⅢ」と進めていくのだが、上司もまたその流れに沿って、レベルを上げていくことをこのプログラムでは要求している。
上級指導者研修は計18回行われ、本研修の受講予定者を部下に持つマネジャークラス(GM、当直長など)350人が2日続けての研修を受講した。
1日目は午後から「実践力開発プログラムにおける上司の関わり」の講義、「若年層の現状把握」や「部下育成について」のグループ討議、「コミュニケーションの必要性」や「部下との面談」の演習が行われた。2日目は終日を使って、初日に行われた「部下育成について」の発表会、「課題設定について」「上司としての支援」「評価」「これからの部下育成」をテーマにした講義、そして「課題設定の確認」に関するグループ討議などがあった。
グループ討議や演習を交えながら、より実践的な内容で研修を行った。
「部下とのコミュニケーションの重要性を知ってもらったり、ほかの人の面談の仕方を見ながら、いいやり方はどんどんまねてほしいという思いがありました。マネジャーは部下育成を概念的には知っていますが、実際に面談のとき部下の長所をどう話したらいいか、能力を上げるとき具体的にどこを伸ばせばいいかといった点は、実際のところわかっていませんでしたから」
実践力開発プログラムでは、本人と上司の研修はワンセットである。ここにプログラム成功のカギがある。だから本研修の受講予定者が異動して上司が変わったケースでは、新しい上司が上級指導者研修を受けていないという理由で、本人の研修も翌年に回す対応をしている。上司の存在が重要と思うから、そこまで徹底しているのだ。
研修カリキュラムは「通常版」と「短縮版」の2パターン
実践力開発プログラムの受講予定者は、研修に入る前にまず事前学習をすることが決められている。2006 年の例で言えば、8月の1カ月の期間内に指定された課題をこなさないと研修内容が理解できない、あるいは能力が伸びない仕組みになっている。
「研修センターに入寮するとき、コースマスターが事前課題ノートをチェックし、やっていない人は帰ってもらうことにしていました」