連載 調査データファイル 第72 回 雇用・人事システムの構造改革 大学生の就職活動
現在の雇用状況は、買い手市場から売り手市場に転換している。
大卒者に対する求人数が急激に増加しているのだ。その結果、学生の大手・有名企業志向が強まり、途中で第一志望の企業が変わるなどの変化をみせていることが調査データによって明らかになった。
どんな理由が彼らの決定要因になっているのか……。就職戦線の実情を検証していく。
1. バブル期を凌ぐ求人数
2002年を底として景気が回復基調に転換したのに伴って、10年以上も減少傾向が続いていた雇用が、近年、増加傾向に転じている。
2002年以降の雇用者数の推移をみると、2002年の5331万人を底として増加に転じ、2007年5月には5572万人まで増加している。
さらに、2003 年以降の雇用者数の増減傾向(前年同期比の寄与度)を産業別にみると、産業計では2003年10~12月期以降、前年同期比で一貫して増加傾向にある。こうした増加傾向が最も鮮明なのはサービス業であり、次いで医療・福祉である。
前者はサービス経済化の流れに沿って雇用が増加してきているが、後者の医療・福祉は、介護保険制度の導入や規制緩和の進展によって雇用を増加させてきている。
こうした中で、これまで一貫して雇用者を減らしてきた製造業が、2005年10~12月期にプラスに転じており、労働市場の需給好転に大きく寄与している。
このように、最近の雇用回復は、債務、設備、雇用の3つの過剰を清算した企業が、再び成長力を取り戻してきたことを示しており、その象徴が製造業の復活である。自動車、機械など輸出産業の復活による雇用回復は、サービス業での雇用増と相まって求人を拡大してきている。こうした中で、大卒者に対する求人数は、バブル期を上回るまでに増加している。
リクルートワークス研究所によれば、来春2008 年3 月卒業予定の大学生・大学院生を対象とした民間企業の求人総数は93.3 万人に達し、昨年よりも10.8万人増加(13.0 %増)し、バブル期を上回り調査開始以来最高水準となった。求人倍率は2.14 倍となり、大幅な売り手市場となっている。