連載 サービス品質・業務品質向上のための教育③ 人的サービスのクオリティをどのように高めるか
顧客接点が機械化・システム化している昨今、人的サービスの品質向上・品質管理がとても難しくなっている。
4回連載の第3回では、接客における人の存在価値を見出し、One Best Wayがない“人的サービスの教育”という課題について、ケーススタディを交えながら考えていく。
1. 「真実の瞬間」における1 今日的変化
かつてヤン・カールソンは顧客接点の重要性を、その著書『真実の瞬間』(ダイヤモンド社、1990年)で説いたが、時代の流れの中で、その顧客接点に変化が起きていると考える。その変化とは、人的な応対のウエイトが減少してきているのではないか? ということである。
何か商品を購入する場合も、販売形態はセルフや通信販売であったり、もっと大きな変化にインターネットショッピングの普及があり、対面販売の機会は減少していると考えられる。また、サービスを利用する際の機械化・システム化が進んできた。たとえば、鉄道利用では自動券売機や自動改札機が中心となり、銀行ではATMの利用が中心というお客様も増えているであろう。このように、かつては人的サービスが中心であった顧客接点から、相対的には人が引き上げられていると考えられる。
では、人的サービスのウエイトが減少した顧客接点は、お客様にとってよくないことなのであろうか? 実は、セルフ化・機械化・バーチャル化などが進んだ顧客接点は、企業にとってもお客様にとってもメリットのある、Win-Winな関係にあることが数多く存在する(図表1参照)。
・機械化やシステム化によって、定型的なサービス業務は正確さ・スピーディさを増した。電車の乗り換えを携帯電話やインターネットで調べられるのに、わざわざ駅員に尋ねる人は少ないだろう。
・顧客の購買履歴に応じたリコメンドできるシステムに対して、それができない販売員は多い。
・人的応対はどうしてもバラツキがでるが、機械やシステムにバラツキはない。
・よかれと思ってやってもクレームになる接客の難しさがある一方で、機械は接客クレームをもらわない。
・営業時間といった制約もシステムには少なく、24時間365日応対でお客様主導のオペレーションも可能である。
・こういったことにより人件費を抑えられれば、企業としてはローコストオペレーションが可能であり、それがロープライスにつながれば価格的な価値も提供できる。
このように見てくると、もはや人がかなわない提供価値があることは明らかである。「人でなくても良い」ではなく、「人でないほうが良い」ことが数多く存在するのである。
2. 人が行うべき価値のある応対は何か?
経営という視点から見れば、人件費はコストの中でも大きなウエイトを占める。それでもなお今日、顧客接点に人を配するのであれば、それは相当の付加価値を求めなければならない。