インタビュー 米国陸軍士官学校で教えるリーダーシップ 大切なのは「品格あるリーダー」になること
エリート軍人を輩出することで知られている米国陸軍士官学校。
常に危険と隣り合わせで仕事を遂行しなければならない軍人を養成する現場で行われているリーダーシップ研修とはいかなるものなのか。
今年リーダーシップに関する本を上梓し、リーダーシップ研究の第一人者でもあるコルディツ大佐に、ビジネスの世界にも共通するリーダーシップ論について聞いた。
Q. 米国のリーダーシップ研修の現状について教えてください。
米国の現在のリーダーシップ研修は、すべての層のリーダーへの「アカウンタビリティー」養成に焦点を当てています。アカウンタビリティーとは、リーダーシップでいえば、「個人的責任」のことであり、リーダーが組織に対して個人的な責任をもつということです。
同時に、ビジネスにおけるリーダーの「倫理意識」を強めることは、ビジネスにとっても国にとっても大変に重要なことです。われわれは、多くのビジネスリーダーに失望してきました。エンロンやタイコなど数多くの例がありますが、これらは、われわれアメリカ人すべてが「リーダーであるとはどういうことなのか」と、考え直す機会になったと思います。
米国のリーダーは、いかなるビジネスにおいても、もはや米国がリードできる状況ではなくなってきている、ということはわかっているのです。オフショアリング(海外移転)に見られるようなグローバルな展開のなか、米国のリーダーはグローバル・コンピテンシーをもたなければなりません。
また、現在の米国のリーダーシップを特色づけるものとして、「セキュリティー意識」の増大があります。不安定で不確実な現在、いかなるリーダーもセキュリティー意識をもち、組織の危機を切り抜けていかなければなりません。従来にも増して、危機におけるリーダーシップが求められています。
テロ以外にも、ハリケーン・カトリーナなど自然災害の影響も大きく、世界は常に不確実です。先行きの見えないビジネスにあって、人々は将来のビジョンを示してくれるリーダーを求めているのです。
Q. リーダーシップ研修には、概念・スキル・アセスメント・個人的成長という4つのアプローチがありますが、これについてはどうお考えですか。
これらすべてのアプローチは今でも存在していますが、成熟の段階にあるといえます。たとえば、多くのリーダーは現在、アセスメントに慣れています。それは10年前には新しいアプローチでしたが、360度アセスメントも今では当たり前のものになっています。
これら4つのアプローチのうちでもっとも重要なものは、「個人的成長」であると私は思います。特に米国の企業幹部には、謙虚さを身につけ、自分自身について知り、リーダーとしての自分を開発していくことが求められています。これは米国のビジネスリーダーシップにとって、非常に大切なことなのです。
Q. eラーニングの動向については、いかがでしょうか。
eラーニングの普及は爆発的です。多くの技術的進歩により、従来では考えられなかった領域での学習が可能となりました。技術の進歩は教育に多大な便利さを与えましたが、加えて、eラーニングの学習プロセスは管理しやすく、学習する組織にとって有益なものです。
ウエストポイント(米国陸軍士官学校、以下ウエストポイントと表記)の教育の多くは伝統的でアカデミックな傾向にありますが、eラーニングを増やす方向に動いています。学生の多くは、1学期または1年を海外もしくは国内の大学や軍事大学などで過ごすため、遠隔地の彼らのためにeラーニングが必要です。