My Opinion ―③ 「人間力」を強化する教育へのアプローチ
「人間力」という言葉を明文化したり、あるいは定義化することは非常に難しい。
ここでは、研修講師の立場で、昨今、リーダー教育に必須といわれる人間力の本質をはっきりさせ、どうすれば人間力を高めることができるかを提示したい。
とくに、「日本企業に人間力が求められる背景」「人間力の要素分析」「人間力強化の施策」に絞って考えていく。
今、なぜ人間力なのか
もし、「人間力」を定義するならば、「For the people(人々の為)、for thesociety(社会の為)、and then for me(最後に自分の為)」が一番適切に表現しているかもしれない。これらに明確に優先順位をつけることができ、実践できる人が人間力のあるリーダーではないだろうか。人間はやはり自分が大事だからと「for me」が優先順位の一番めになるのは当然と考える人は、正直なところリーダーにふさわしくない、と私は考える。
成果主義が職場に導入され、MBAという言葉が一般的になってきたところに、「人間力」という言葉が登場してきた。日本企業は、欧米の成果主義をモデルとして導入したが、定着は難しいといわれることが多い。欧米(とくに米国)と日本の経営スタイルを比較すれば、その違いは明らかである。
米国の経営スタイルの特徴としてあげられるのは、①効率と合理性の追求、②個人と企業との契約関係、③格差と競争、の3つがある。
逆に、日本の場合は、①合理性と非合理性の組織、②個人と組織の長期的な関係、③同属意識、集団意識、という特徴がある。
とくに日本社会の場合、共同生活体は企業を取り巻く隣人社会である。最近、雇用形態の違いで格差社会になってきたといわれるが、集団意識(チーム意識)は根強く残っている。新日本的経営の提唱の中でも、長期的関係の中で、周りの人と組んで、あるいは巻き込んで成果をあげることが日本人に合っているという認識がされている。日本の組織は、欧米以上に情緒的に個々を束ねる必要がある。だからこそ、経営者や管理職の人間力は、組織の中でますます必要になってくるのである。
人間力の基本要素
かつて、松下政経塾の面接で、松下幸之助は、2つの質問をしたという。
「君は、女性にもてるか?」