巻頭インタビュー 私の人材教育論 与えられた機会をしっかりと捉えて、 自分で自分を育てる
2003 年の持株会社制移行に伴い、大規模な経営変革を実行するとともに、50 年続くコーポレートブランドを刷新した帝人グループ。
人と地球環境に配慮した化学技術の向上、社会と顧客が期待している解決策を提供することを約束する“Human Chemistry, Human Solutions”を新たなブランドステートメントと定め、環境と経済が両立する環境ビジネスを積極的に、そしてグローバルに展開していく。
その原動力となる人材はどのように育成されるのか。
2001 年から帝人を率いてきた長島徹社長に話を伺った。
持株会社と構造改革
── 長島さんは2001 年11 月に社長に就任されて、2003 年4月に帝人を持株会社に移行させていますが、これはどのような狙いからの組織改革だったのでしょうか。
長島
かつては会社の中に多くの事業を抱えて経営を行っていました。その時代は親会社単体の売上高、利益を一生懸命伸ばすことに力を傾けていれば良かった。しかし90年代に入ってきた頃から、それで済まなくなってきたのです。子会社を含めた連結決算が重要視されるようになってきましたし、法的にも商法改正が大きな課題となり、連結経営時代の流れになってきていたからです。
実際、企業の実態も単体経営ではつかめない姿にどんどん変わってきていました。当社なども2000年頃になると、単体と連結の売上高の比率がどんどん変化してきて、単体の売上高に対して、連結売上高が4倍になってきていたわけです。それならいっそ帝人の中にある事業グループを分社化・独立させて、帝人をホールディングカンパニーにし、それぞれの会社から配当をもらって経営していく形態にしようということになったわけです。
── そうしますとスタッフなどの管理部門や研究開発部門などは、どんな体制にされたのですか。
長島
経理や財務、人事、教育といった共通管理部門については独立した会社にし、そこから各社にスタッフを出向させてサービスを提供する形にしました。持株本社は各社から配当やブランド料をもらう形になるわけです。
ただし、研究開発については本社で費用をもっています。新規事業は立ち上げて黒字になるまで時間がかかります。したがって卵を産み、孵化(ふか)してから、ある程度事業としての目処がつくまで、持株本社で費用をもつという形にしています。本社の中にスタッフとして抱えているのは秘書室、経営企画室、広報・IR室、業務監査室、法務といった部門です。
── 持株会社化した狙いは単体と連結の比率の問題だけだったのでしょうか。
長島
2つめの理由は、分社化してそれぞれ独立会社にすれば、経営内容や責任が明確化されて構造改革が進めやすいこと。
そして3つめには、グループに属している事業会社を親会社、子会社といった関係ではなく、フラットな関係にしていきたい。そんなことからグループ企業を事業部門ごとに括っていったわけです。
「選択と集中」ではなく「集中と選択」、そして「選択して集中へ」
── 現在、帝人グループはどのような形になっているのですか。
長島
ポリエステル繊維事業グループ、高機能繊維事業グループ、フィルム事業グループなど7つの事業グループに分かれていて、それぞれのグループに中核会社を置いてその下に関連企業をぶら下げる構造をつくりました。
たとえばポリエステル繊維事業グループには帝人ファイバーという中核会社があり、その社長がグループ長として、事業グループ全体の経営をみる形になっています。設備投資を例にとれば、30 億~ 100 億円までは持株会社のCEO の権限、100 億円以上は取締役会の権限、30億円以下は各事業グループ長の権限となっています。