講演録 日米ビジネススクール比較 ライフスタイルに合わせたMBA 取得 日本のビジネススクールの可能性
MBAを取得できるビジネススクールが国内に増え、選択肢が広まってきた。
そもそも日米でMBAの内容に違いはあるのだろうか。そんな疑問を解決してくれる講演が、2007年10月20日に青山ビジネススクール主催のイベント「青山MBA特別フォーラム・ビジネススクールで何を学ぶか」の中で行われた。同学教授で、米国のビジネススクールで教鞭をとった経験もある飯塚敏晃氏による講演の概要をまとめた。
求められるものが異なる日米のビジネススクール
青山ビジネススクール(青山学院大学大学院国際マネジメント研究科)は、1990年4月設立の夜間大学院「国際ビジネス専攻修士課程」を源流とする。私学における夜間大学院では我が国初。現在は修士課程としてMBAプログラム(昼間のフルタイムおよび夜間のフレックスタイム)とEMBAプログラム(企業による推薦制)、さらに国際経営学博士号が取得できるPh.D.プログラムと、経営管理博士号を取得できるDBAプログラムを提供する。
今回開催の「青山MBA特別フォーラム・ビジネススクールで何を学ぶか」というイベントは、青山ビジネススクールへの入学を検討している人が主な対象者。開会のあいさつに続き、同学教授・飯塚敏晃氏による日本とアメリカのビジネススクールの比較についての講演が行われた。
飯塚氏は、アメリカの大学院で修士号および博士号を取得した後、ビジネススクールの助教授として教鞭をとり、足掛け11年間をアメリカで過ごした国際派である。経営学の戦略論および組織論を専門とする。経営コンサルティング会社での勤務経験もある。
本論のポイントは3つ。まずは日米のビジネススクールの違いについて、カリキュラム、学びに来ている学生の年齢やプロフィール、学費、社会の中での位置づけなどの側面から比較した。次に、ビジネススクールに求められるものが日米で大きく異なると指摘。そして最後に、青山ビジネススクールの特色についてのアピールがあった。
学生の年齢と学費が大きく異なる
ビジネススクールのカリキュラムの骨組みや内容は、日米でほとんど差はないという。では、何が違うのかというと、第1に学びに来ている学生のプロフィールがまったく違う。
図表は、飯塚氏がアメリカで教鞭をとったバンダービルトおよびバークレー、そして青山のビジネススクール3校を比較したもの。学生の年齢は、日米で約7年の開きがある。青山に限らず、日本のビジネススクールでは企業経験の長い学生が多い。そのため、必然的に学生の年齢が高くなる。青山の場合は年齢構成のバランスがとれていて、29歳以下、30~34歳、35~39歳、40歳以上でほぼ4分の1ずつになっている。
次に学費の違い。これも大きい。米国は年間約4万ドル、生活費を含めると6万ドルかかり、若い人にとっては結構な自己投資だ。一方、青山は日本のビジネススクールの中では安いほうで年間120万円、高いほうの早稲田でも年間180万円程度である。
日本人学生は英語で議論できるまで最低1年かかる
では、日本人にとって日米どちらのビジネススクールにするかを選ぶことには、どのような意味の違いがあるのか。
「アメリカを選ぶ人の動機は、第1に、とにかくアメリカに行ってみたいということが考えられます。そして、世界各国の学生と英語で議論したい、あるいは本場のビジネススクールで学びたい、そういった情熱は誰にも止められません。私自身も、とにかくアメリカに行ってみたかったので留学しました」(飯塚氏、以下同)
ただし、日本人にとっては、越えるのが困難な「英語の壁」がある。
「留学して1年めは英語の練習になりがちです。議論についていけるのは2年めになってからでしょう」