第20回能力開発優秀企業賞受賞企業 本賞 資生堂
店頭での売上げ評価を全廃し
顧客本位の行動を評価に反映
受賞テーマ
店頭からの活動革新
2005年度からの3カ年計画において、資生堂は「100%お客さま志向の会社に生まれ変わること」を経営ビジョンの1つとして掲げた。このビジョン実現のための中心的なアクションプログラム「店頭からの活動革新」が本賞受賞の対象となった。
①従来ビューティーコンサルタント(BC)の活動評価指標であった「売上高」や「推奨品の販売数量目標」を撤廃、それに替わる指標として、顧客からの直接の声である「お客さま応対満足度評価」を人事評価に組み入れたこと。②活動革新に連動させてBCの資格・研修体系の改定を実施したこと。トップの強い想いのもとに進められたこれらの改革が、BC本来の顧客志向を効果的に引き上げ2007年3月期、当社の連結売上高・営業利益は過去最高を記録。これが経営理念・戦略と人材育成施策がかみ合った事例として高い評価を受けた。
業界トップ企業が陥った悪循環
明治5年、資生堂は日本初の洋風調剤薬局として東京・銀座に創業した。明治30年には日本の化粧品メーカーの草分けとして、高級化粧水「オイデルミン」を発売。以来、国内化粧品ブランドNo.1の地位を確立し、ひたすらトップ企業として業界を牽引し続けてきた。また戦後には海外展開も本格化させ、世界第5位の化粧品メーカーとして国際的にも広く認知されていった。
しかし2000年代に入ると、資生堂ブランドにも陰りが見え始める。ライバル会社が次々に打ち出してくる新商品に対抗し、資生堂も「多ブランド戦略」を選択。ブランド数は100を超えるまでに膨らみ、消費者が混乱するほど複雑化した影響からか、全体の売上げは低迷し、シェアも下がり続けていた。人事部長の高重三雄氏は語る。
「商品の種類が増えれば増えるほど、お客さまのニーズに細かく対応できることは確かなのですが、それぞれの商品ブランドが成長できないまま小粒化し、全体として『資生堂』という大きなブランドが見えにくくなってしまうという弊害が出てきたのです。結局、お客さまにとってどの商品が資生堂のものなのかがわかりにくくなってしまいますし、店頭でお客さまに商品を提案するBC(ビューティー・コンサルタント)にとっても、数多くの商品の特徴や知識を把握しにくくなっていました。これでは、せっかく資生堂というブランドに信頼を置いていただいているお客さまを裏切ることになります。『お客さま本位』を貫き、BCが的確によりよい商品を提案しながら築いてきた弊社の方針に照らし合わせても本末転倒です」
数多くの商品ラインナップが揃えられた反面、強いブランドが影を潜め、それが売上げ低迷に直結する。それを打開するために新商品が投入され、さらに資生堂のブランドイメージが分散化・希薄化していく。一方、一度発売された商品は売れ行きが芳しくなくても、開発部門のメンツが重視され、なかなか廃止することができない……。業界トップを走る大企業であるからこそ陥りやすいこの悪循環に、資生堂も直面したのである。