HRD JAPAN 2008 の見どころ ここに注目! HRD JAPAN 2008
厳しい経済状況を抜け、新しい時代へ向けた新たな経営の舵取りが求められるようになった。
人事・人材育成分野においては、人材の能力・個性・価値観を尊重し、各人の活力を最大限に引き出すことで、個人と組織がともに持続的に成長できる新しい組織を創造していくことが求められている。
そのような未来への想いを込め、HRD JAPAN 2008 では「人材の活力が組織の未来を創る」を基調テーマとし、さまざまな切り口から、新たな時代の人事・人材育成について考えるプログラムが用意されている。
ここでは、HRD JAPAN 2008 の見どころを紹介しよう。
個人の活力を引き出すセッション10 大テーマ
HRD JAPAN 2008は、基調テーマを軸に複数のセッションテーマが展開しており、社員1人ひとりへの働きかけによって、その集合体である組織を強くする取り組み事例をさまざまな切り口でとらえている。特に社員に対する働きかけは、昇進・昇格や金銭的処遇といった外発的なインセンティブというよりは、キャリアパス、人としての成長、働きがいといった内発的な動機づけを中長期的な視点で重視していることが注目に値する。セッションテーマの詳細は次の通りである。
●キャリアサポート
●ミドルマネジメントの復権と創造
●人材を活かす評価・処遇制度
●人材採用から次世代リーダー育成までの段階的な人材育成
●コミュニケーション・価値観の共有と浸透による組織力の強化
●多様な働き方のサポート
●働きがいのある組織
●メンタルヘルスへの取り組み
●組織と人材の活性化による強い現場づくり
●技術・技能伝承
これらの各テーマに基づいた先進企業の取り組み事例発表に加え、最終日には特別企画として、大会基調テーマに基づくパネルディスカッションを実施。成果重視に偏りすぎた人材マネジメントから、従来多くの日本企業が大切にしてきた「人」の側面に再度着目した議論を展開する。
オープニングセッション
企業経営者による基調講演& 特別対談
初日のオープニングセッションでは、資生堂代表取締役執行役員社長前田新造氏を基調講演に迎える。前田氏は代表取締役就任以来、「魅力ある人で組織を埋め尽くす」をビジョンに掲げ、企業内大学の設立や人事制度の抜本改革等、人事・人材開発面の改革に注力し、社員を大切にする経営を実践してきた。これは、同社が1872 年の創業以来、顧客重視の姿勢を貫きつつ、顧客に提供する価値を創造する人材を大切にしてきた流れをくむものである。
人材重視の経営に多くの企業が回帰している昨今、人を基軸とした経営に誠実に取り組んできた前田氏の話は、ビジョンを実践するリーダーのあり方という観点からも注目できる。
オープニングセッションではさらに、神戸大学大学院経営学研究科教授金井壽宏氏が、星野リゾート代表取締役社長星野佳路氏を迎えて対談を実施。リゾート再生において現場社員の主体性を喚起することによって組織を蘇らせ、強くしてきた星野氏の経験談から、働く人の活力の源泉を読み解く。
Aセッション
A-1 ~ A-2
特別企業研究:花王
人材マネジメントの絶えざる革新
ヒット商品を次々に生み出す花王の強さの秘密を、人材マネジメントの視点から徹底解剖する。
セッション冒頭は、花王の経営の軸をなす花王ウェイを紹介する。事業のグローバル展開を加速化している今、花王という企業が大切にする価値観、目指す方向性を明文化し、発信していくことが必要不可欠となっている。そのうえで、ウェイを構成する「使命」「ビジョン」「基本となる価値観」「行動原則」の実践のために打ち出された組織・人材戦略がある。花王の経営と組織・人材の整合性が学べるだろう。
花王の組織・人材戦略を俯瞰的にとらえた後、特徴的な組織・人事施策を個別に取り上げていく。
まずは、次世代リーダーの選抜と育成。花王では「基幹人材育成プログラム」として、ディスカッションや現役トップマネジメントとの交流カリキュラムをはじめ、異業種数社との合同セッションも導入している。中期の取り組みとして、能力・実績の尺度、それぞれの役職に必要な能力を国内外で統一。海外現地法人の採用社員に対しても、日本人スタッフと同様に経営幹部への登用の道を開くなど、人事・人材育成のグローバルな「標準化」を進めている。日本企業が抱える海外現地スタッフの育成やリテンションなどの問題に対しての1つのヒントが得られるだろう。
続いて、シニア社員のキャリア開発。昨年から同社に導入された定年後「再雇用(シニア・パートナー)制度」の概況と、そのフロー確立・仕組みについて紹介。合わせて、「ライフキャリア」の視点から、個ありきの自立支援策についても触れる。
特別企業研究セッション最後のテーマは、社員意識調査を活用した組織力向上策。同社が2年おきに実施している社員の声・意識調査「FIND」は人事・人材開発分野では有名で、処遇・人材育成・職場風土など、さまざまな角度から現場の声を吸い上げ、その結果を分析・評価して改善に結びつけている。そのサイクルが、健全な企業風土とそれをベースとした「強くて良い組織づくり」に寄与しているといえる。