企業事例 日立電子サービス 人間力から実践スキルまで 入社直後の8カ月で身につく企業内大学
コンピュータシステム技術の進歩と社内の採用基準の多様化により、新入社員のスキルレベルの早期一元化が必要になった日立電子サービス。
社員のスキルと人間力を向上させるため、創業時より開設している
企業内大学を時代にマッチさせ、より進化させて現在に至っている。
40余年の実績を持つ同学校における、現在の取り組みと効果を取材した。
“安心の「電サ」”を築く人財を育成
日立電子サービス(以降、電サ)の「コンピュータシステム技術学校」は、新入社員教育の計画立案と実施を目的とする人財開発本部所属の企業内大学である。ほとんどの電サ社員がこの学校のOB、OGであり、彼らは母校のことを親しみを込めて「コ学」という略称で呼んでいる。
コ学の前身は、電サが設立される前年の1961(昭和36)年にできたコンピュータサービス学校で、当初は日立製作所の運営でコンピュータ技術と“人間力” の向上に寄与してきた。1989(平成元)年からは電サ主体の学校となり、現在、神奈川県東戸塚で電サおよびグループ会社の新入社員教育を担う。
電サは、企業向けITシステムの企画から調達、構築、運用、保守までトータルサポート・ソリューションを提供する統合サポートサービス会社であるが、10年ほど前から社員の業務内容はもとより、それに対する人財育成・教育のあり方も大きく変わってきたという。その背景をコ学の山田保校長は次のように語る。
「弊社が設立された昭和30年代は、コンピュータの黎明期でした。弊社の業務も、当初はコンピュータ・通信機器の保守・工事など技術的サポートが主流でしたが、ちょうど電サ主体の学校になった頃から企業のIT化が進み、基幹システムのサーバ化や社内次世代ネットワークの構築など、より高度に、より広範なものへと変化しました。コ学は最先端のIT技術を習得する場としてはもちろん、お客様から信頼されるビジネスパーソンとなれるよう人間教育を施す場として機能してきましたが、この社会状況の変化に対応して、絶えずカリキュラムの見直しを繰り返し、今日に至っています」
特にコ学が大きく変化を求められたきっかけは、採用基準の変更だった。以前なら、電サの新入社員はほとんど電気・電子等の理系学科卒が当たり前だった。そうであれば、新人のITスキルのレベルも一定以上かつほぼ均一だと見込める。しかし2000年以降、学部学科を問わず、まず“人間性”をみて採用しようという方針に転換したのである。そのため、4年制大学卒であっても理系以外の学科出身者が増え、その他、大学院卒から高等専門学校・高等学校卒、そして中途採用者まで、多種多様なスキルレベルの新人がコ学の門を叩くようになった。
コ学では「基本動作とコア・スキル(ITスキルの普遍的基礎+ヒューマンスキルの基礎)を身につけ、“安心の『電サ』”を築く人財を育成する」というスローガンを掲げ、それを達成するために4つの重点項目を挙げている。
①基本教育の強化(基本と正道)
②サービス感度の向上(お客様視点)
③ITスキルの向上(教育品質)