企業事例 日興コーディアル証券 新人と育成指導者の間で 育成状況を見える化
新人の早期戦力化は急務だが、成果主義導入の中、育成を日々の業務推進の中に組み込むのは難しい。
また育成方法も、現場任せにすれば濃淡ができ、新人の育成レベルも各部署ごと各様となる。2007年度に約800名の新卒採用者が営業部門に配属された日興コーディアル証券では、育成カリキュラムと、Webを使った多面評価システムを組み合わせた新人育成プログラムを開始。もうじき1年になるその育成プロジェクトを取材した。
急増した新卒採用者の早期戦力化が急務
約850名の新卒社員を、現場のハイパフォーマーたちがマンツーマンでサポートし、全社共通のカリキュラムのもと、育成していく――。日興コーディアル証券が現在行っている新人育成プロジェクトは、従来のOJT、Off-JTにはなかった、きめ細かで効率的なフォローが行えるのがポイントだ。
プロジェクトの概要と狙いについて、同社の川上肇人材育成部次長は次のように語る。
「2007年度の新卒採用は約850名。そのうち約800名が営業部門に配属されました。このため、リテール戦力の養成が急務となったのが、今回の育成プロジェクト誕生のきっかけです。
当社では、かつてインストラクター制度を設けていた時期もあったのですが、特にマニュアル化してはいませんでした。またここ数年は成果主義を導入していたこともあり、負担の増大を懸念してインストラクターの任命は中止していました。
もちろん、入社時研修や定期的なフォローアップ研修は行っていましたが、OJTは完全に現場に委ねるしかない、というのが現実でした」
現場任せの育成では、若手の成長レベルとスピードにばらつきが生まれがちである。なぜなら、指導にあたる育成指導者によって指導方針、指導方法はさまざまであるからだ。
「育成指導者と若手の認識ギャップも課題でした。若手の可能性を広げるためにも、両者の認識のギャップを埋める必要がある、と考えていました」
また育成目標についても、それまでは業績など定量的な指標はあったものの、「いつまでに」「どんなことが」「どのレベルまで」できるか、といった行動面のマイルストーン(指標)はなかった、と川上氏は振り返る。
段階を追ったカリキュラムでマイルストーンが明確に
そこで、2006年度にサポーター制度を、さらに、2007年度からは育成カリキュラムと多面評価を行うQSF(QuickScan Feedback:行動習慣化ツール)を組み合わせた新人育成プログラムを開始した。
「サポーター制度は、入社2年までの新人を、管理職に加えてサポーターが指導する制度で、支店が推薦したハイパフォーマーが担当します。基本的にマンツーマンですが、1人のサポーターが2、3人の新人を受け持つケースもあります。彼らが若手や会社との間で認識を共有したうえで、効果的に育成指導を行うために設定したのが、全社的な指導ガイドラインである新人育成プログラムです」