My Opinion-① 若手に仕事を教えるコツは 相手を理解しようとすること
いまどきの若手に仕事を教えようとしても一筋縄ではいかない。
人手不足で若手の即戦力化を望む企業だが、現場の教育担当者は四苦八苦しているのが現状だ。
それでは、どこに気をつけて何をすればよいのか。
いまどきの若手を分析しつつ、仕事の教え方のコツについて多くの若手社員向け研修を手がけてきた関根雅泰氏に寄稿いただいた。
納得しないと動かない いまどきの若手社員
1.Y世代(Generation Y)
アメリカでも若手社員の育成には手を焼いているようだ。筆者が参加した2007年6月のASTD国際会議*では、1980年代生まれの若者、通称「Y世代(Generation Y)」への対応について、複数の講演が実施されていた。講演者によって、それぞれの定義や特徴に若干の違いはみられたが、共通していたのは、次のような点だ。
・Y世代は、目的・理由・意味を重視する「Why世代」である
・Y世代は、「マルチメディア(多様な情報伝達手段)」になじんでいる
これはアメリカだけでなく、日本でもあてはまるであろう。「何のために」「どんな意味が」という問いを言葉に出したり、態度・表情で示したりする若手社員は多い。説明を求め、自分が納得しないと動こうともしない。もちろん目的意識や問題意識を持つのは良いことである。ただ、行き過ぎると「ウダウダ言わずにやれ」と先輩・上司から疎まれる時もある。
TV、インターネット、ゲーム、携帯電話、iPod等を通して、情報が多様な手段を用いて伝達されることに慣れているY世代にとって、たとえば、モノトーンの座学一辺倒の講義型研修は退屈極まりないもののようだ。ASTDには研修講師が多く集まることから、Y世代の興味・関心を惹きつける研修運営の仕方に関して多くの情報交換が行われていた。
2.適度な距離感
「放置は嫌だが、ウザイのも嫌」──これが若手社員の本音のようだ。
「勤務時間中に仕事を教えてもらえるのはありがたいが、勤務時間外の“飲みニケーション”はうっとうしい」「自分のことを見ていて欲しい。困った時は助けて欲しい。でもあくまで、こちらがそう望んだ時に」……
わがままに聞こえるかもしれないが、こういうふうに考えている若手は多い。書籍『だから若手が辞めていく』(ダイヤモンド社・編)で著者らは、「しつこいとウザイ。でも適度にかまって欲しい」というのが、いまどきの若手社員に共通する感覚だと述べている。
その半面、若手社員の多くは、同質集団内でのコミュニケーションに長けている。学校時代は、自分と同じような価値観を持つ相手と付き合い、合わない人間とは積極的に付き合う必要がなかった。そのため、仲間内での「空気を読む」能力に長け、いかに同質集団から「浮かない」ようにするかが重視されてきた。
逆に、異質集団との付き合いには慣れておらず、特に年長者との接し方には不慣れな者が多い。そのため、飲みニケーションや「誰も行きたくないカラオケ」(東京大学中原淳准教授のブログ参照)で、年長者と長時間にわたって接するのを嫌がる傾向がある。年長者からの接点は、あくまで彼・彼女らにとって「適度」なものを望むのである。
3.成長願望
書籍『3年目社員が辞める会社・辞めない会社』(東洋経済新報社)著者の森田英一氏の言う「成長実感」や、『人が育つ会社をつくる』(日本経済新聞社)で高橋俊介氏が述べているような「成長予感」を期待する若手社員は多い。「成長したい」「自分を高めたい」という前向きな願望は当然好ましいものである。だが、若手社員の場合、それが強迫観念に近いものであったり、短期的な視野でしか見えなかったりする時に問題が発生しやすい。
年長者からみれば「そんなに焦らなくても、今の仕事を一生懸命やれば成長するよ」と思っていても、若手社員にはそうは思えないようだ。「今、この仕事をしている時間がもったいない」「他の部署や会社に行けば、もっと自分を成長させてくれるはずだ」と安易に考えてしまう若手社員もいるのである。巷にあふれる書籍や転職雑誌がそれを後押しする。「ここではないどこか」を求めてしまうのだ。