重重無尽 自ら学び、人と交流すること それが仕事に活きてくる
上司から教わるよりも、自分で研究して仕事をしながら覚えていくほうが、技術は身につくと私は思います。そして、技術を磨くだけではなく、人との付き合いを通じて得るものと合わせていくことで、さらに進歩があるのでしょう。
私は東京染小紋という染色の伝統工芸士です。中学を出たあとに定時制高校で学びながら働き始めた染工場は、染物の問屋をしていた父親がつくったものでした。とはいえ、父親は問屋なので、染物の技術は持っていません。父は私にその工場を任せようと考えたのです。一般的には京都に修行に行くのが普通なのですが、父の意向で、修行せずにいきなり仕事を始めなければいけませんでした。
しかも、経営側でもあったので、職人さんたちがつくったものを確認しなければなりません。しかし、失敗について文句を言うにも、技術がない素人が言っても聞いてくれません。職人さんの中には、次の日から来なくなる人もいました。意見を聞いてもらうには知識がなければダメだし、技術を見る目もなければいけないのです。