巻頭インタビュー私の人材教育論 行動し続けることが 自己を向上させ組織を変革する
地球環境問題やBCP(事業継続計画)への配慮が企業活動に求められる中、建物、設備、エネルギーのトータルマネジメントによって環境性・継続性と経済性を両立させたソリューションを提供しているNTT ファシリティーズ。
1992 年、NTT からの分社・設立以来、厳しい環境で生き抜くために、それまでの風土や考え方を大きく変えてきた。
今後は、高まる市場のニーズに応えていくため、一歩先の付加価値を提供できる人づくりに取り組む。
その陣頭指揮を執る森勇社長に話を伺った。
技術力を高めるために社員1 人ひとりの能力をいかに高めるか
── NTTファシリティーズには、さまざまな専門分野に精通したスペシャリストがいらっしゃいますね。たとえば、1級建築士なら731名、第3種電気主任技術者なら1775名。その他、電気関係やエネルギー、ITなど、その数は延べ約2 万名にも上るそうですね。社員数が5800名ですから、複数の資格を持つスペシャリストが少なくないということですね。
森
当社の事業は、IT、エネルギー、建築の技術が基盤ですから、お客様の信頼を得るためには、何よりこれらの技術力が問われることになります。資格があればいいというわけではありませんが、資格を有している社員の数がどれだけいるかということが評価されることも事実です。また、現実に資格を保有していないとやっていけない仕事も少なくありません。ですから、社内では「資格を獲得しなければ仕事はできない」という仕組みとともに、積極的に資格を取得しようというムード作りもしています。
いずれにせよ、技術力を高めるには社員1人ひとりの能力をいかに高めるかということに尽きます。その意味で当社は、社員は宝、人財だと位置づけて資格取得に対するバックアップをはじめ、人材育成に力を注いでいます。
── 現実には、資格取得は一朝一夕にはできません。通常の仕事とは別の自己啓発が重要になると思いますが、その意味で意識の高い社員の方が多いのだろうと推察します。
森
そうですね。技術が高度・複雑化していく中で、1人ひとりがより多くの資格を取得しようと、よく頑張ってくれていると思います。まだまだ増やしたいというのが本音ですけれども(笑)。
── 森社長ご自身もたくさんの資格をお持ちなのですか?
森
社員にはっぱをかけているわりには、私自身は大した資格は持っていないのです(笑)。電電公社に入社以来、あちこちいろんな部署で仕事をしてきましたから、資格を取る必要がなかったというか……。それこそ、北海道から九州まで、1カ所に2年以上いたことがないくらい転勤ばかりしていました。
── そんなに……。大変でしたね。
森
いやぁ、大変とは思わなかったな(笑)。電電公社に入社したのも、あちこちいろんなところで働けることが面白いと思ったから。むしろ、新しい土地に行くのも、新しい人と出会うのも楽しみでした。
シナジーを引き出すにはチームワークの醸成が重要
森
入社して最初の3年間は通信設備部門に配属されました。しかしこの時期は見習いのようなものでした。次が電力担当の技術調査。いわゆる仕様書作りでした。2年で近畿通信局に異動になって、ここでは技術調査課の調査係長。技術調査の仕事もやりましたが、採用担当として新入社員の育成の手伝いもしました。兄貴分としていろいろ指導するのです。
── 通常の仕事に加えて採用や育成の手伝いとは、ずいぶんお忙しかったでしょうね。
森
次の本社の係長の時は、データ通信の電源装置を設計するというのが実際の仕事でした。先端技術の導入を推進していく仕事ですから、やりがいがありました。その一方で後輩の面倒もみなくてはいけません。しかし私も若かったので、今となっては楽しかったという思い出ばかりですね。
その後、課長として東北通信局へ異動になり、東北管内の技術指導に加え、ここでも採用、育成の仕事をしました。この時は優秀な人材をいただきたいと、大学や高専を訪問したりもしました。
── 技術者としてだけではなく、採用や育成の仕事にも早くから携わっていらしたのですね。
森
電電公社には、多い時には30万人以上もの社員がいました。それだけの数の人材をいかに採用し、いかに育成するか、そしていかに適材適所に配置するかというのは、重要な仕事です。最終的な調整は別にありましたが、人事も事務と技術に分かれていましてね。私は、技術サイドの人事担当の仕事に早くからかかわっていました。