連載 組織を元気にするメンタルヘルス 第5回 メンタルヘルスとキャリア開発支援、組織開発の統合 働きやすい職場環境作りに取り組むIT 企業
IT業界では心の病にかかる人が他産業の10倍?
あるソフトウェア会社の産業医によると、うつ病などの心の病にかかる人は他産業の10倍に上るそうだ。ソフトウェア業界の仕事の特殊な環境が、社員のメンタルヘルスに深刻な影響を与えているらしい。
第1の問題は、常態化する長時間労働。多くのIT企業ではプロジェクトチーム制を採っているが、ユーザー企業の厳しい要求に応えつつ、少人数で生産性を上げようとするあまり、分業や若手の人材育成がうまくいかず、リーダーやベテランに負担が重くのしかかる。長時間労働で帳尻を合わせようとして、心身を疲弊させていくケースが多いようだ。世間が寝静まった深夜にシステムのテストやメンテナンスを行う場合もあるため、どうしても夜型になる。体内時計のリズムが乱れてしまうので、不眠症やうつ病になりやすい。
第2にコミュニケーションの問題。技術者はどちらかというと人とのコミュニケーションが苦手で、ユーザー企業の厳しい注文や、突然のクレームの電話といった仕事に多大なストレスを感じてしまう人も多い。上司と部下の関係にも特有の事情がある。技術の進歩が目覚しいIT分野は、若手のほうが最新技術を習得しやすく、知識量で部下が上司を上回るという逆転現象が起こりがちだ。上司が「逆パワハラ」に悩んでうつ病になるケースもあるという。
厚生労働省の発表によると、精神障害による労働災害の申請数が2006年は819件に上り、職種別ではSEなどの専門技術職が199件と最も多かった。