連載 人事担当者のための正しいメンタル不全対策 第5回 焦らず・慌てず・先走らず 医療機関へと促す方法
前回は、身近な社員にうつ病の初期兆候を発見したら、まずその人の話をじっくり聞き、除去が可能な職場のストレス要因はすぐ取り除くことが重要、ということをお話しました。しかし、ストレス要因を軽減するだけではケアとして不十分な場合があります。
たとえば、睡眠障害が表れている人の中には『眠れない→ 仕事に集中できない→ 軽減された仕事すらこなせない→ さらに悩む→ ますます眠れない』といった悪循環に陥っている人が多くいます。この場合、睡眠薬の処方を受けるなど、医療機関の力を借りることも必要です。そこで今回は、医療機関に行くべき人に対し、職場の上司(管理職)や人事労務関連部門はどう声をかければいいか、また、医療機関を勧める場合には、どこを勧めたらよいのかをお話ししましょう。
不調そうな人を病院に向かわせるには?
前回も申し上げましたが、他の人から突然、「精神科に行ったほうがいいよ」などと言われ、自分の“心の問題”を指摘されると、多くの人が強い抵抗を感じます。
これに対して、身体の不調については素直に周囲の助言を受け入れやすいものです。ですから「眠れない」「食欲がない」「頭が働かず、仕事が思うようにできない」「職場に来ると頭痛がする」など、具体的な身体面や行動面の症状に注目しながら、「眠れないのはつらいね」「あまりに食べられないようなら、病院で点滴を打ってもらったら」など、“体の健康問題”として受診を勧めると、比較的抵抗なく医療機関へと誘導することができます。最初は内科医への受診でも構いませんので、とにかく医療機関へつなげることが重要です。一度、医療機関につながれば、医師から精神科医療機関を紹介され、適切な医療に結びつくことがほとんど。いきなり病院にいくことに抵抗がありそうなら、より身近な職場の産業医や健康相談等を利用するよう勧めることも有効です。
では、そうして医療機関を受診した人から「精神科へ行くよう医者に勧められました」と報告を受けたら、管理職や人事部門としては、どう返事をするのが適切でしょうか。