連載インストラクショナルデザイナーがゆく第27回 3 つの“E”で切り取る 私的ASTDナビ
共に学び心を通わせた友人が得られた4日間
今年もASTDの季節がやってきた。5月31日~6月3日という日程で初夏の爽やかな海外出張になるはずだったが、未曽有の不況と新型インフルエンザというダブルショックの真っ只中。日本を発つ前、周囲からは「本当に行くんですか?」とくどいくらい尋ねられ、やや悲壮な心持ちで米国の首都ワシントンD.C.に乗り込んだ。マスクをつけ、アルコール消毒ティッシュを握りしめて足を踏み入れたウオルター・E・コンベンションセンター。ミーティングルームの片隅にそっと座ると、みんなが一斉にこちらを見る。「えへっ」と目だけで笑って親愛の情を見せたつもりが、それが余計に不気味だったのか、遠巻きにチラリ、チラリ。迷惑そうな顔を無視して1人に近寄り挨拶すると、「そっ、その恰好じゃ、あなたが保菌者みたいよ」と言われ、慌ててマスクをとった。
というわけで個人的に波乱の幕開けとなった今年のASTD。主催者側の発表では、参加者は例年並みということだが、空席の数や満員御礼の表示がないことから、2~3割は少ない感じがした。その分、ゆったり情報交換ができたのは不幸中の幸いというべきか。
ASTD のプレジデント、トニー・ビンガムは、「この不況下でも、ASTD調査対象企業の38%が人材教育に今まで以上に投資している。なぜなら従業員の80%以上が5年後にはスキル不足になることがわかっているからだ。経済が好転した時、人材に投資した企業とそうでない企業の致命的な差が歴然となる」とハッパをかけていたが、私はASTD2009に参加して「3つのE」が頭に浮かんだ。