連載 調査データファイル 第90 回 外国人高度人材の活用① 留学生の急増で変化する 日本企業の外国人登用の現状
日本政府は、少子高齢化による労働力人口の減少を懸念し専門・技術職などの高度人材分野で外国人労働者を受け入れるべく、2008 年に「留学生30 万人計画」をまとめた。
2008 年度の外国人留学生の数は12 万3829 人。
出身地域は北東アジアが8 割近くを占め、専門分野も文系が7割近くになっている。
このような現状の中、留学生の日本国内での雇用はどこまで進んでいるのか。
また日本企業にとって外国人高度人材受け入れに必要な対策とは何か。
今号から2 回にわたって、外国人高度人材の活用について考えていく。
1. 急増する中国人留学生
近年において経験したことのない深刻な不況に見舞われている日本経済も、ようやく回復の兆しを示す経済指標がいくつか出始めている。外需依存度の高い日本経済は、輸出が活発にならない限り成長軌道に復帰できない宿命を負わされているが、最近の景気回復の兆しは、米国ではなく中国によってもたらされている。
巨額な財政支出によって景気回復を推し進めている中国経済は、バブル経済の可能性をはらみつつも高成長を維持すると見込まれている。中国に資本財やハイテク産業の重要基幹部品を輸出している日本は、中国の景気が回復することによって輸出が増加し、景気回復を早めるという好循環が機能し始めており、中国依存度の高い経済構造が着々と構築されつつある。
こうした中国依存度の高まりは、人的資源の領域でも進展し始めている。少子高齢化が急速に進む日本は、労働力人口の減少が予想されており、外国人労働力への依存度を高めつつある。ただし日本政府は、単純労働分野への外国人労働者の導入を抑制していく方針を堅持しており、積極的に受け入れていくのは、専門・技術職といった高度人材の分野に限定している。こうしたことを背景に、2008年にまとめられたのが「留学生30万人計画」である。
ただし、現実は厳しい。留学生の受け入れ状況は、1998年から2005年にかけて急拡大しているが、その後は横ばいで推移している。留学生総数の推移を見ると、1998年度(5万1298人)、2005年度(12万1812 人)、2008 年度(12万3829人)となっている(図表1)。留学生30万人計画を実現するためには、現在の3倍近い留学生を受け入れなければならないというのが現状であり、日本語教育の支援体制、英語授業、奨学金制度などの拡充が求められている。
また、急増してきた留学生の出身地域(2008 年度)を見ると、アジアが9 2 . 2 %と大半を占めており、欧州(3.0%)、北米(1.8%)などその他の地域は少数にとどまっている。さらに、国別で見ると、中国(58.8%)が6割近くを占めており、次いで韓国(15.2 %)、台湾(4.1%)が続き、北東アジア3カ国で78.1 %と8割近くを占めている(図表2)。このように、わが国に来る留学生は、その大半が中国を中心とした近隣3カ国からであり、世界各地から幅広く留学生を受け入れているといった状況にはなっていない。