連載 人材教育最前線 プロフェッショナル編 自ら切り拓いた経験を活かして 現場と教育の橋渡しをする
横河レンタ・リースの能力開発グループリーダの石川智子氏は、一般職として採用された後、自ら希望して営業職に転身。その後も部署を異動し、視野を広げた。さらに、これらの経験を活かして、現場教育から全社教育へと活躍の場を広げている。「教育制度づくりはまだ道半ば」と話すが、これは創業から22年、右肩上がりの業績で来た同社ならではの悩みでもある。20周年を機に同社では「教育元年」を宣言。自律的に成長する社員が、今後の発展には欠かせないとし、ますます教育に力を入れている。そんな同社で育成を担う石川氏に教育への想いを聞いた。
仕事の経験を重ねる中で成長する喜びを実感する
現在、能力開発グループのグループリーダとして横河レンタ・リースの教育と採用を担う石川智子氏は、1990年に一般職として入社。当初は「長く勤めるつもりがなかった」と言う。というのも学生の頃は、養護教諭になりたかったからだ。ひとまず民間企業に就職したのは、教育実習の際に覚えた違和感のためだった。
「高校時代に出会った先生方の情熱に惹かれて教員を目指しました。しかし、教育実習の時に、学生からそのまま教員になってしまうと、自分の世界が狭くなってしまうのではないかという危機感を持ったのです」
まずは1、2 年、民間企業で修業しよう――石川氏はそう考えた。
「卒業間際の就職活動でしたから、そんな時期に採用してくれる会社は少なくて。叔父が勤めていて、親しみを感じていた横河を受けてみたのです」
入社してみると、1、2 年のつもりが、辞められなくなってしまった。毎日が充実していたからだ。入社当初は教員試験の問題集を開いたりもしたが、1年めが終わる頃には横河レンタ・リースでの仕事に引き込まれていた。
「 SA(セールスアシスタント)職で採用されましたが、当社のSA は客先より電話で直接問い合わせを受けて、在庫調整、金額提示、受注、金額回収するまですべてを任されます。営業が客先で種を蒔き、SA が発生した問い合わせを受注に結びつけるため、お客様への対応は営業職以上に密なものになります。経験を重ねる中で、どうしたらお客様から本音を聞き出せるか、クレームにはどう対応をすればいいかなどを習得していくことができて、楽しかったです」と、石川氏。2 年が過ぎた頃にはSA 職に飽き足らず、自ら営業職への転身を願い出た。SA 職はほとんど女性だが、そこから営業職への異動を願い出る人は少ない。石川氏は実際に顧客に会い、自分でプロセスを立てて営業をしてみたかったという。
そして営業職になったとたん、担当したばかりの大手複写機メーカーからのレンタル受注量が半期で前年の3 倍と、一気に増えた。社内で数少ないセールスウーマンということもあり、大いに注目を浴びることになる。
「タイミングが良かっただけなのですが……」と石川氏は照れる。しかし、その会社との取引比率が、横河2、ライバル会社8 だったのが、最終的に8対2 とひっくり返ったのは、石川氏の活躍があってこその結果だったことは間違いない。
とは言え、注目を浴びてプレッシャーを感じる中、仕事に忙殺されたことも事実だ。休日出勤をして資料を整理することも珍しくなかった。
「 3年間営業の仕事を続けたのですが、家庭を持ってこの生活は無理だと思い、結婚を機にSA 職復帰を願い出ました」
当然のことながら、上司には引きとめられた。そこで、新卒で入った営業マンを自分の後任として育ててから、SA に戻ったという。
異動をきっかけに視野を広げる
こうして1995 年、再びSA 職に戻った石川氏だったが、やりがいは以前より増した。
「営業を経験して判断能力が増したからです。若手の営業よりも自分の判断のほうが間違いない(笑)」
その経験が買われたからだろう、SA リーダに任命された。石川氏は「この頃は、まだ結婚や出産を機に退職する女性が多かったので、逆に結婚しても続けていた私は任せやすかったのかもしれません」と振り返る。