企業事例 三井化学 部署ごとのストレス度合いを 社内で順位付け、 自発的な改善を促す
三井化学ではメンタルヘルス関連の教育により、早期発見ができるようになった。
だが、根本原因である職場のストレスそのものを低減させない限り、メンタルヘルス不全に陥る人の数を減らすことはできない。そのための第一歩として、ストレスそのものを個人単位ばかりでなく、職場単位で認識させることを始めた。
メンタルヘルスを個人の問題から組織の問題──皆で取り組み改善していくべきことに変換したのだ。
上司の意識は十分でも予防できない理由
三井化学のメンタルヘルスに関する取り組みを牽引するのは同社の産業保健スタッフである。本社人事労制部のもとに健康管理室が置かれ、本社、研究所、工場など国内12拠点の健康管理室を統括している。産業保健スタッフは、産業医15名(うち常勤8 名)、常勤保健師12名、看護師11名(常勤9 名)、常勤衛生管理者9 名(常勤がいない事務所は兼務者を選任)。人事・労制部健康管理室長(本社健康管理室長)は全社の労働衛生を進める責任者でもある。毎年事業計画を立て、それに則った施策を展開し、全社で足並みそろえてメンタルヘルス対策を行えるように主導している。
こうした対策の成果として、本社健康管理室長の土肥誠太郎氏は同社の状況について次のように語る。
「かなり早い段階で部下のメンタル面での異変を上司がキャッチし、『危ない』と思えば健康管理室へ相談に来ることが普通になっています。たとえ、メンタルヘルス不全で休職となっても、その後の復帰支援も含め、非常によい状態で実施されています」
上司が部下のメンタルヘルスに気を配るのは当然であるとの考え方が浸透してきているからだ。それは管理職へのメンタルヘルス教育の成果だともいえる。
同社ではこのように、いわゆる一般的なレベルでのメンタルヘルス対策は十分になされている。この背景には、1980年代以降から近年まで、メンタルヘルス不全を訴える社員が徐々に増加し続けてきたという事実があった。けれども近年、それからさらに一歩進んだ対策を始める必要が出てきた。「早期発見も、発見後の対策もできるようになった。それでもメンタルヘルスの問題が減らなかったのです。そもそもの原因のストレス自体を減らさなければ、根本的な問題解決はできないと考えました」(土肥氏、以下同)
根本原因であるストレスを軽減できなければ、いくら上司が部下のメンタルヘルスに気を配っても、「もぐらたたき状態から抜け出せない」と土肥氏は言う。この状況から脱しようと、1999年にまとめられたのが、三井化学全社の「メンタルヘルス増進計画」である。2000年に本社健康管理室長に就任した土肥氏は、この計画に沿って精力的に施策を進めてきた。
その結果は、メンタルヘルスを理由とした疾病休業日数の減少(図表1)に現れている。十数年以上にわたって、同社ではメンタルヘルス不全などを理由とした疾病休業日数が増加し続けてきたが、2004年をピークに微減あるいは横ばい状態となったのだ。