My Opinion② 部下を見守る上司の姿勢が 異変の早期発見につながる
職場におけるストレスの原因は「人間関係」「仕事の質」「仕事の量」の大きく3 つ。
事態の改善は、各職場のリーダーである現場の管理者の手の中にあると言っても過言ではない。
とは言え、現代の若者には、かつての叱咤激励スタイルのマネジメントは通用しない。
つねに部下の状況を見守り、支えていくことが求められている。
予防と早期発見は管理職の責任
厚生労働省が5 年ごとに行っている「労働者健康状況調査」(数値は2008年)によると、職場のストレス原因として真っ先に挙がるのが「人間関係」(38.4%)である。これに続くのが「仕事の質」(34.8%)と「仕事の量」(30.6%)。部下の人間関係のキーパーソンであり、部下の仕事の質と量についての権限を持つ現場の管理者のあり方が、メンタルヘルス対策にとって重要な要素であることがわかる。
それでは、現在のような厳しい経営環境下で管理者は、どうすれば沈滞ムードの職場を活性化し、元気な職場に変えることができるのか。また、生産性を高めると同時に、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことができるのか。
カギになるのは、第1 に法令遵守の意味で労働安全衛生法の知識、第2 にメンタル系の病気への正しい理解である。特にメンタルヘルス不調には、どういった兆候が見られるかを知っておくことは予防に有効である。そして第3 がマネジメントの切り口。上司の部下への関心の持ち方と、部下との信頼関係づくりの良し悪しが、メンタルヘルスの改善・向上を大きく左右する。
元気な職場をつくる3つの要件
元気な職場とは、誰もが充実感が得られ、結果として生産性の高い職場である。元気な職場が成立するためには、①仕事が楽しい、②信頼感がある、③働きやすい環境が整っている、という3 つの要件が必要であろう。
ただし、単に“仕事が楽しい”といっても、仕事は遊びではないので、目標に対する納得感と達成感、そのプロセスにおける充実感がポイントになる。それは上司の仕事の与え方に大きく左右される。与える仕事の質・量が部下の能力に見合っているか、また、職場の方針や目標、責任権限が明確であるかが重要だ。
次に、職場に信頼感が醸成されるためには、上司と部下の間はもちろん、職場内に活発な対話があるかどうかがカギになる。さらに、その対話を通じて問題提起とフィードバックがあり、職場の課題が全員に共有されていることが重要だろう。また、評価への納得感も欠かせない条件である。
もう1 つの働きやすい職場環境とは、協力・支援し合う風土、ワークライフバランスがとりやすいこと、安全で衛生的な職場といったことが要素になってくるだろう。
少し補足をすると、仕事が楽しいかどうかは、仕事における創造性の有無によるところが大きい。かつてはどんな仕事でも創意工夫の余地があり、QC サークルのような改善運動が盛んに行われた。
だが、OA 化とIT 化が極限まで進んだ現代においては、機械的で無味乾燥な作業が増えている。だからこそ、職場の中の活発な対話、課題の共有によって自分の仕事の意義を理解しつつ、質の高い“協働”を実現することが求められているのだ。
元気な職場になるかどうかは、現場のリーダーである管理者次第。働きやすい環境をつくるように努め、部下が気持ちよく仕事ができるようになれば、上司である自分の信頼も高まっていくに違いない。何よりそうなれば、自分自身も働きやすくなり、管理者、教育担当者として高い成果を上げることができるだろう。