連載 HRD Professional Road 人材開発プロの道 Vol.10 活動を振り返る(前編) ─PDSを通じて組織が学ぶ─

PDS を回して学んでいくことは重要だが、それが意図的にできる組織はなかなかない。
論理性や合理性だけでつくられたPlan では、See を行う時につまずいてしまう。
そこで現場感覚、実感が重要になるのだ。いかに振り返ればいいのか、今号で紹介しよう。
「振り返り方」を振り返る
前号まで、人材開発部のPDS(Plan-Do-See)で言えば、P とD に当たるところを紹介してきた。それをいかに振り返り(See)、改善につなげていけばいいかを今号で紹介する。
コンサルタントとして、いろいろな会社に出入りしているとPDS の「P⇒ D」だけ、下手をすれば「D ⇒ D ⇒ D」だけで、「検証プロセスが回っていない」という場面によく出くわす。「何となく流されてやっている」ということも耳にする。
いくつかのプロジェクトに参画して感じることは、とにかく「やる(Do)」というところまでの勢いはすごいが、進んでいくうちに、「そもそもなぜそれをやっているのか」という目的への立ち返りが行われなくなるということだ。結局担当者が異動か何かでどこかへ行ってしまって、なし崩し的にプロジェクト自体がなくなってしまうケースもある。たいがい、一番想いを持っていたのは実際にそれを動かしていた人で、その次に来た新しい担当者は前任者と違うことを行おうとするし、大抵その上の上司も実はあまり実態を把握していなかったりする。結果として、なし崩しになる、ということも多い。
どうやら、組織として意図的にPDS がきっちり回せている、と胸を張って言える状況というのはそうそうなさそうである。
●実証、検証ブームのはざまで
一方で最近、人材開発部では、なるべく客観的で具体的な指標で測定しようという動きが少なからず見られる。つまり、「やりっ放し」を避けるためSee の部分をより客観的に行おうというのである。
こうした動きとして記憶に新しいところでは、成果を職務ごとに個別化して達成状況を明らかにしようとする「成果主義人事制度の導入」や本誌8月号で特集されているような「教育効果の測定」などがある。本連載の3 月号で述べたように、施策を客観的に検証するための「論拠や根拠」として、このようなデータの提出を、経営陣から求められることとも呼応しているかもしれない。
一見、これらの活動によってPDSサイクルはうまく回せるように思える。だが、果たしてそうだろうか。客観的な指標により成果をチェックするシステムをたとえ無理やりつくって運用したとしても、それが組織にとって本当に有益なのかどうか、疑問を差し挟む声は多い。
たとえば、1990 年代の後半、経営環境の悪化に伴ってリストラが敢行された際に、工場で事故が頻発したことがあった。この原因は、経営状況を改善するために金銭的価値として指標化できない“人智”を無視してリストラを敢行したことではなかっただろうか。経営状態の逼迫もあり、数値化できるものだけが正しいという極端な状況が生まれ、指標として「見える化」できなかったものが評価から切り捨てられてしまったのだ。これでは暗黙知などの「見えない」要素が失われ、結果として、本来の目的(コンセプト)である経営状況の改善も達成されなくなってしまう。
このように自ら決めた指標に振り回されて、本来の目的や意図が達成されないという本末転倒な状況を避けるためには、次のような根本的な振り返りの視点──我々、我が社の実感からして、そもそもそういう指標で表現されている「モノ」が自分たちの得意としてきた働きぶりを表し、評価・学習(See)する手段・ツールとして妥当なのか──を持ち続けることが必要だ。そして、こうした根本的な視点のベースになるのは、自分の所属する組織や個人としての経験や実感である。
● See(振り返り)の前に
意味のあるSee を行うためには、実感が重要であるという問題意識から、本連載3 月号や7 月号、そして9 月号においても、「行為を通して現場をコトとして実感する」こと、「暗黙的なスキルやノウハウ」の重要性、「制度運用について実感ベースで気づく」ということを通じて、見えないもの──視覚的にとらえられないものへの感度を高めることの重要性を説いてきた。