STRATEGY 新たな価値創造のため多様な経験を積ませ 幅広い視点を持たせる

新たなビジネス──価値を生み出す“ 人”こそが唯一の財産という住友商事。同社の人材育成戦略の要になるのは、10 年間の育成期間を経た後の入社11 年めから始まる完全実力主義。今年からはこれに育成的ローテーションを加えて、優秀な人材に意図的に経験を積ませることを狙っている。こうした制度面からの変革と同時に、グループ企業全体としての力を底上げするために、グループ企業合同の教育やナショナルスタッフの研修を行うなどその教育は多岐にわたる。変化が激しい今、これまで以上に力を入れて多様な視点を持つ人材を育てている。
人材育成に力を入れた中期経営計画
商社は、トレードを事業の柱とするため、特に大きな資産を持っているわけではない。新たなビジネス──価値を生み出す“人”こそが唯一の財産と言っても過言ではない。したがって、人をどう活かすかが、商社としての“生命線”。そのため、当社では従来から、人の育成に力を注いできた。
だが、現在は非常に変化の大きな時代である。この変化の時代に今まで通りの仕事をしていては、会社が立ちいかなくなるのは目に見えている。
その中で今、当社に必要な人材は、幅広い視野を持った人材だと考えている。幅広い視野を持った人材ならば、さまざまな変化や、多様なあり方を受け入れ、それをチャンスに変える柔軟性を獲得することができるだろう。そして、その中から新しいビジネスを発想できる人材を育成できるかどうかが、当社の今後の持続的な成長を左右する。
そこで今年策定した中期経営計画「Focus'10」では、「価値創造力を高める人材および組織づくり」を重点目標の1 つとして掲げた。
この中期経営計画で明確に人材育成と組織づくりを挙げたことは、会社として人材育成に注力していくことを示す経営トップからの強いメッセージである。
この目標を受けて、人事部門では①個々人の更なるパワーアップ、②各組織の人材マネジメント力の強化、③連結ベースでの人材力強化、④グローバル人材の一層の育成・活躍、を育成の重点4 項目として設定した。
完全実力主義と10年育成期間の設置

まず、「個々人の更なるパワーアップ」の土台となるのが、2006 年度に導入された新人事制度である(図表)。これは、入社後10 年間をプロの商社人となる育成期間と位置づけて処遇に差をつけず、管理職となる11 年め以降は完全実力主義として、年齢に関係なく「期待役割」に応じて評価・処遇を行うという制度だ。
それ以前の人事制度では、入社10年めで管理職への選抜昇格を実施していたが、これを廃止。入社後10 年間は賞与の一部を除いて処遇の格差を一切つけず、原則として11 年めで全員を管理職に昇格させることにした。その狙いは、最初の10 年間は昇格の早い遅いを意識せず、一人前の商社人となるために知識を習得し、さまざまなことにチャレンジして多様な経験を積むことに集中してもらうことにある。その間、知識の定着を図るための「キャリアパス制度」を設けている。これは試験を2 回行うものでTOEIC の基準点数を満たすことや、当社の企業内大学の「住商ビジネスカレッジ」で専門的な知識研修を受けて試験にパスすることを求めている。