STRATEGY 環境の変化に合わせて 人材戦略を変える柔軟性を持つ

KDDI が直面しているのは市場の変化。新サービスや新製品を投入すれば、携帯電話の契約数が拡大する時代は終わった。そうしたかつての成功体験や携帯電話会社主体の論理から一刻も早く脱却し、つねに顧客起点――顧客のニーズ、ウォンツを的確に見極めて、顧客とともに課題解決をしていこうとする意識と行動力が求められている。そこで、同社では「チャレンジ・アンド・チェンジ」をキーワードに、組織体制までを変える勢いで変化に臨んでいる。
市場の変化に対応するチャレンジ・アンド・チェンジ
通信業界、特に移動体通信の分野はこれまで右肩上がりの急成長を遂げてきたが、現在はほぼ1 人1 台の普及率に到達し、天井が見えてきた感がある。少子高齢化で人口の増加が望めない今、事業は大きな転換期にさしかかっていると考えねばならない。サービスレベルでは競合他社との差がつきにくくなり、本当の意味での営業力がますます要求されるようになる。
通信業界の歴史を振り返れば、これまでは携帯電話会社主導で急成長を遂げることができたが、今後はお客さま主導の市場に変わるだろう。どこまで「お客さまの目線」に合わせられるかが最重要課題になる。この市場の転換に対応するには、かなりのパワーがいる。従来と同じ発想では、激化する競争の中で勝ち残るのは難しいだろう。極端に言えば、組織体制そのものを変えるほどの勢いが必要だ。
こうした状況の中を勝ち残るためにKDDI のトップは「チャレンジ・アンド・チェンジ」というキーワードを繰り返し用いて、社員のチャレンジ意欲を喚起している。社員1 人ひとりに変わってもらわなければならないからだ。個々の社員に具体的なチャレンジ課題を掲げ、日々、取り組んでいって欲しいと願っている。
だが、いまひとつ現場の危機感が弱いように感じる。移動体通信は国内市場が中心のインフラ事業であり、このたびの世界的な経済危機の影響が、輸出のウエイトが大きい他業種に比べると大きくないからかもしれない。ただ、それも時間の問題だ。遅かれ早かれ危機感を持って変化に対応しなければならない。
KDDI は京セラ系のDDI とトヨタ自動車系の日本移動通信のIDO、国際電話のKDD の3 社が合併し2000年10 月に誕生した。2010 年には10周年を迎えることになる。これまでも人材育成を主眼に人事施策を展開してきたが、この大きな節目をひとつの契機と見据えて、人材育成によって社員力を一層強化し、通信市場での競争を勝ち抜いていきたいと考えている。
今後のカギはグローバル人材の育成
通信市場においても、今後は新たな事業領域に入っていくが、その1 つがグローバル展開だ。主力事業の1 つとして、グローバルICT(Informationand Communication Technology)に注力していくからだ。グローバル展開に対応できる人材を育成することは人材戦略の1 つのカギである。そこで2つの海外研修プログラムを明確に位置付けた。
1 つは2008 年に従来の制度を拡充してできた「海外トレーニー制度」。これは、若手社員を2 年間、トレーニーとしてグループ会社の海外法人へ派遣するものだ。海外拠点へのトレーニーとしての派遣は以前からあったが、オープンな社内公募制度として整えた。技術系、業務系の両者を対象に、合計10 名を目処にアメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアの4 拠点へ派遣する。単なる“語学のプロ”ではなく、多様な価値観と高いコミュニケーション能力を身につけ、将来、幅広い分野で実践的に業務を遂行できる人材を育成するための仕組みである。
選考では、キャリアよりもやる気を重視し、国内のコンシューマー営業を担当していた社員が、中国へ派遣されたケースもある。派遣前はまったく中国語が話せなかったが、語学、文化や現地のビジネス慣習など、仕事をしながら現場で日々、吸収しているようだ。