連載 HRD Professional Road 人材開発プロの道 Vol.11 活動を振り返る(後編) ─振り返りの実践─
前号では、「振り返ること」の重要性について述べてきた。今号では、振り返ることの意味やレベルを視野に入れながら、実際にどのように「振り返り」を進めるのか。事例などを交えて紹介する。
意味のある振り返りを行う
10月号においては、「振り返る」ことの重要性について、振り返った。今号では、実際にどのように振り返ればいいのか、そして、それを集団や組織で行ったり、第三者に伝える工夫をどのように行えばいいのか。さまざまな事例を交えて説明していきたい。
それでは、V 字の最も下部から見ていこう(図表1)。
●上位目標との連鎖と、振り返り
一番わかりやすい振り返りは「達成度の評価」をすることである。
目標の達成度は、自動的に算出可能なものが多いため、振り返りの作業そのものは比較的簡単である。たとえば人材開発の目標でいえば、「教育コストダウン○ %」「研修アンケート満足度 ○点」といったものが目標として挙がっていて、それを「行ったか行っていないか」で判断するものが多い。
しかしながら、達成度評価はわかりやすい一方、その目標が上位の目的ときちんと連鎖、整合していないと、振り返りとして意味をなさない。
さまざまな企業に出入りしていると、この目標設定に得手不得手があることを実感する。たとえば、組織風土活性化の施策として、トップとの対話集会を開くとしよう。施策そのものの筋としては良いのだが、目標設定は、勢い「上期○回実施」「下期○回実施」となりがちである。これでは「やったかどうか」という実施の有無を振り返ることはできても、本来の目的である組織風土活性化に対する振り返りはできない。これを測るには、活性化が起きている状況をよく思い浮かべたうえで、何が“決め手”になるのかを想定しながら、指標に工夫を加えていくことが重要である。たとえば「社長のストローク*1対従業員のストローク比率1:1以上」などという目標を設定したらどうだろうか。
対話集会の意図が社長の一方通行になりがちな社員へのアプローチを改めるということであれば、単に会合を開くにとどまらず、その対話の内容にフィードバックがかかるような目標設定をすべきである。
目標設定技術についてはそれだけで本が出ているくらい*2なのでここでは深く触れない。だが、単に行ったか行っていないか、ということ以上の学びを引き起こすような目標設定をすることが重要である。
●データを用いた振り返り
達成度の評価という、事前に設定した目標について振り返るやり方について紹介したが、改めて事後に指標をとるという方法も有効である。